memo
12.9.15 テイルズリンク2(9/16追記アリ)

 細い月がささやかな光を投げかける夜、かさかさと風が木々を揺らす音に紛れて一つの影が窓枠を飛び越え庭へと降り立った。
(今日もちょろいな)
 誰にも気付かれていない事を確認してルークは一人ほくそ笑んだ。警備の白光騎士団は外からの侵入者への警戒はしているが、内からの脱走者への警戒はしていない。それに何年も彼らの動きを眺めてきたのだ、どこの警備が手薄かなどルークにだって何となくわかった。
 こっそりと屋敷を抜けだしたルークが向かうのは裏手に広がる森。慣れたように木々をかき分け道なき道を進めばまもなく目の前が開け小さな湖が姿を現した。だがルークの目的はその湖を見ることでは無い。ルークは月明かりに照らされ煌めく水面を隈なく見回した。
(あ、居た居た)
 目的の人物が見つかってルークはホッとした。これで居なかったら何のために見つかる危険を冒してまでここまで来たのかという話だ。良かったと思いながらルークは相手に気付かれないようになるべく気配を消して、だがもっと近くで見たいという己の欲求に逆らわず茂みをかき分け湖に近づいていった。
(相変わらず綺麗だなぁ)
 ルークの目の前で銀色に輝く水を纏っているのは自分とあまり年が離れてないように見える青年。細い金糸のような頭髪にすらりと長い手足、空のようにも宝石のようにも見える澄んだ碧い色の瞳。辺りの人気の無い様子と合わさってどこか幻想的な雰囲気を纏う彼はまるで一枚の絵画のようだった。
 彼を見つけたのはこうやって偶然ルークが屋敷を抜け出した時である。成人までは屋敷から出てはいけないと命じられていたが、まだその時までは数年もの長い時間があった。いくらなんでもルークも我慢の限界だった。ちょっとだけだからという軽い気持ちでルークは脱走を試みたのだ。
 運良く見つからず抜けだせたルークだったが、その時はとりわけどこに行きたいという目的は無かった。とりあえず屋敷さえ抜け出せたのならどこだって良かった。鬱蒼とした森の中を屋敷を出れた開放感と何か面白いものが無いかという期待、そしてちょっとだけ不安を抱えながらさまよった結果この湖にたどり着いたのだ。そこで彼を見つけたのである。
 まさか屋敷の者以外の人にこんな森の中で出会うことなど無いと思っていたのだから突然の彼の出現に驚きの声をあげなかっただけ自分を褒めたい。だが初めて見た時は本当に心臓が止まるかと思った。その時の情景は鮮明な色を保ったままルークの記憶に残っている。こんな綺麗な人を見たことは無かった。これからも無いんじゃないかと思っている。

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