memo
11.11.24 日々の言い訳

「なあ、どうしたらいいかなジェイド…」

ガイは非常に悩んでいた。目の前にいるブウサギにひそかに助言を求めるぐらいに。

「なんか良い案知らないか?」
「ぷぎっ?」
「はは…そりゃ知らないよな…」

ガイは溜め息をつきながらブウサギのブラッシングをしていた。かれこれ30分ぐらいはこの調子だ。もはやガイの手はただ同じ部分を撫で回すだけになっていたが、ブウサギはおとなしくそれを甘受していた。

「どうした、ガイラルディア?」

思考の海を漂っていたガイは突然ちょいちょいと背中を突かれた。いきなりの事に驚いて振り返ったガイは、背後にいた人物の姿に更に驚かされた。

「へ、陛下!?何故ここに!?まだ公務のお時間では…」
「自主休憩?」
「自主休憩…ってダメじゃないですか!」
「俺の事はどうだっていいだろ!書類と向きあうより可愛いお前の悩みを解決するのが先だ!…で、何を悩んでるんだガイラルディア?俺の可愛いジェイドに相談してたんだ、俺にも相談できるよな」
「う…」

ピオニーの瞳には逃がさないぞという思いと面白そうだという思いがはっきりと浮かび上がっていた。そんなピオニーの強引な要求に負けガイは渋々口を開いた。

「その…陛下は昨年ジェイドの誕生日プレゼントに何を贈りましたか?」
「ジェイドの?あいつには酒だな。ここ数年はそんな感じだ」
「そうですか…」
「なんだぁ?もしかしてあいつの誕生日プレゼントでそんなに悩んでたのか」

ピオニーはなるほどなぁと納得したように頷いた。納得されるのもなんだか…と傍らでガイは恥ずかしそうにブウサギをぎゅっと抱き抱えた。

「いやー本当に可愛いな、ガイラルディアは」
「そりゃ、ジェイドの誕生日ですから…」
「良いものを贈りたいってか?」
「まあ…そうですね。でもジェイドってあまり物欲無さそうですし、たとえあっても自分で買えてしまうから何を贈れば良いのか困ってて」
「ま、あいつ宛てじゃ悩むのも無理ないな。ちなみにサフィールは薔薇とか自作の音機関を贈っていたぞ」

とは言ってもジェイドのやつサフィールからのプレゼントは中身も見ずに捨ててたけどな、とピオニーはからからと笑った。

「ガイラルディアも音機関を上げたらいいんじゃないか?得意分野だろ」
「今から設計図を描いても間に合うかわかりませんよ。それに俺じゃあディストにかなうわけありませんし…」
「かなうとかそういう問題じゃないだろ、贈り物は」
「でも音機関を贈るっていう考えは彼が先ですし…被るのはちょっと…」

ガイと違って残念ながら音機関好きとは言えないジェイドが音機関を2つも3つも貰っても嬉しくは無いだろう。それにこれはジェイドと付き合いだしてから初めてガイがあげる贈り物なのだ。実用的でジェイドがいつまでも使ってくれそうな物を贈りたいというガイの恋心もあった。

「他に何かあれば良いんですが…」
「他にはそうだな…去年はあいつ宛にペンや時計等結構な数の物が届けられてたはずだ。あいつ陰険な割に何故かファンが多いからな」
「そう、なんですか…」
「でもあいつ興味なさそうに『その中で欲しい物があったら勝手に持っていって構いませんよ』って俺に言うんだぜ?本当にあいつらしいと言うかなんと言うか…」
「……」

ただでさえファンが多いというのを聞いて複雑な表情をしていたガイの表情が更に曇る。自分の贈った物もそんな扱いを受けるならいっそ渡さない方が良いんじゃないか。ジェイドに困ったようにありがとうと言われてもそれはそれ辛い。

みるみる内に暗くなったガイの表情にピオニーは失言したと慌ててフォローに回った。

「あ…あーわるいわるい、落ち込ませるつもりはなかったんだ。心配するな、あいつならガイラルディアのプレゼントは何だって受け取るに決まっている」
「それは…嬉しいですけど…。できるなら受けとってもらうだけじゃなくて本当にジェイドを喜ばせたいんです。いつものお礼に少しでも良いから…」

受け取ってもらうのも大事だがそれが目的じゃない。本当にジェイドを喜ばせたいんだ。そんな複雑なガイの心理を悟りピオニーも彼のために一生懸命頭を悩ませた。

「んー…だったらメイドに聞いてみたらどうだ?男が喜ぶ物は俺達よりむしろ彼女達の方が知ってるかもしれない」
「たっ、確かにそうかも…!俺、今から聞いてきます!」
「おう。役に立てなくてすまんなガイラルディア」
「いえ、話を聞いて頂いただけで充分です。あ、その…1つお願いが…」
「なんだ?」
「俺が陛下に色々相談したってジェイドには…」
「秘密に、だろ?そのくらいお安い御用だ」
「ありがとうございます!」

それでは、と一礼して急いで振り返るとぱたぱたとガイは去ってしまった。

「本当に一途でいいやつだなガイラルディアは…あいつには勿体ないぐらいだ」

な?と言うピオニーにブウサギジェイドはぶぅと同意するように鳴いた。



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