ホワイトデー02 | ナノ
結局、無理矢理に書類を終わらせたランスは、提出したその足でコトネへのプレゼントを買いにいった。

やたらと菓子が目につくが、他のお返しにも菓子を沢山貰うだろうから、菓子と何か小さなものを贈ろうとランスは思う。

殆ど寝ていないランスの頭は、ぼんやりとしていて、正常な思考なら考えもしない場所へと足を運んでいた。
というか、流されていた。



若い女性に流され、ランスが辿り着いたのはやたらきらきらとした売り場。
周りに男性の姿は殆どなかったが、ランスの頭は正常な思考を取り戻していなかったので、そこでもうろうろを視線を惑わせる。

ふと目に着いたのは、淡いピンク色で、何故かコトネを連想させた。

そのまま購入し、ふらふらと自宅に戻る。

仕事の残っていたランスを気遣ってか、コトネが家に来る、といっていたのでそれまで一眠りしよう、とベッドのなかで辛うじて考え、ランスは眠りに落ちていった。



ゆさゆさ、と揺られている気がして、ランスは瞼を持ち上げた。
視界いっぱいに広がったのは愛しい少女で、ああもう来たのか、と身体を起こそうとする。
「わ、まだ寝てても大丈夫ですよ」
「いえ……おきます……」
そうは言ったものの、身体はやっぱり重かった。
「……いいことを考えました」
我ながら名案です、まだ半分眠っているランスの頭は、コトネと一緒に寝ることを決定していた。

「う、わっ!」
ぐい、と腕を引き、コトネを自らの腕のなかに抱き寄せる。
「ホワイトデーは明日にしましょう……」

何時もと同じ体温が腕のなかにいることに安堵しながら、ランスはまた深い眠りに落ちていった。



***
「ヒカリ、」
「なっ、なななんですかっ!?」
ヒカリは朝から挙動不振だった。
じい、と見つめれば真っ赤になったし、かといって視線を逸らせば泣きそうな顔をする。

恐らく、ホワイトデーを必要以上に意識してしまっているのだろう、とアカギは思う。
思えば、アカギから何か物を贈ったことは片手で数えられるほどなのだ。

確実に貰えると分かっている日にヒカリがおかしくなるのも当然なのだが、アカギにはその何時もと違うヒカリは愛おしく思えた。

「……いや、なんでもない」
「…………そう、ですか」
明らかにしょんぼり、とした様子のヒカリを、アカギは可笑しく思う。
「そろそろ休憩の時間だな」
一ヶ月前のことを思い出しながら、アカギは菓子を出すために立ち上がる。
やはり休憩の時間に返した方がいいだろう、と思い、プレゼントは菓子と近い場所に隠してある。

先程からころころと表情の変わるヒカリが、次はどんな変化を見せるのか、と内心楽しみにしながら小さな箱と、ケーキを取り出す。

小さな箱をポケットに入れ、ケーキだけを両手にもち、ヒカリの元へと向かった。

今日は紅茶の気分だったようで、向かい合ったカップは琥珀色が入っている。

かちゃり、とケーキの乗った皿を置くと、ヒカリの座っている椅子の後ろにいく。

箱からネックレスを取り出し、丁寧につける。
ヒカリも無言で真っ赤になっていたし、アカギも無言だった。

ヒカリの首周りを飾るのは、これからはこのネックレスだけになるのかもしれない。






20100314
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -