ランコト09 | ナノ
「ランスさーん、おきてくださーい」
朝ですよー、とコトネはランスをゆさゆさと揺さぶる。
無理矢理布団を引きはがし、身体を起こさせるが、瞼がどうしても上がらないようだった。

「おはようございます……」
ぽつり、と寝言のように呟き、もう一度枕に顔を押し付けるランスに、コトネは小さく溜息をついた。

「ランスさんっ、起きてってば!」
先程よりも強く揺さぶり、枕を奪いながらランスの身体をまた起こす。
「……おはようございます……」
「おはようございますっ!寝ないでくださいっ」
無理矢理ランスを立たせ、洗面台まで連れていく。
「はい、顔洗ってください」
こくり、とランスは頷くと、蛇口からお湯を出す。

これでとりあえずは起きるだろう、とコトネはリビングにいく。
起こす前に支度はしていたので、後はランスが着席すれば……。
そこまで考えて、コトネはとあるものを忘れていた事に気付いた。

どうしようか、と考えていると、リビングの扉が開く。
「おはようございます」
本日三回目の挨拶だったが、ランスにとっては一回目の挨拶だったので、コトネもおはようございます、と言う。

「あの、ランスさん……その……」
言いにくそうに言葉を濁らせるコトネに、ランスは首を傾げる。
そのままテーブルの上に視線を走らせ、ああ、と頷いた。
「……コーヒーの粉が、切れてて」
買いに行こうと思ってたのに、忘れちゃって、その。
わたわたと慌てふためくコトネに、ランスはくつくつと笑った。
「それなら今日は紅茶で我慢しましょうか」
たまには私がいれましょう、とランスは台所に向かう。

「……大丈夫かな」
コトネは一人で椅子に座り、溜息をついた。


台所から、陶器のぶつかる楽しげな音が聞こえる。
ああ、割ったりしそうで恐いなあ。
脳の片隅でそんな事を考えながらも、コトネはゆっくりと眠りに落ちていった。


「……コトネ?」
ランスは二つのティーカップを持ってくると、コトネはすうすうと寝息を立てて眠っていた。
最近疲れが溜まっていたようだったし、そのせいで今朝もコーヒーを入れるのを忘れてしまっていたのだろう。
だが、せっかく作ってくれた朝食を無駄にするわけにもいかない。
ランスはそっ、とコトネの肩を揺らす。
「コトネ、眠いとは思いますが起きてください」

ぱちり、と目をあけたコトネがランスを驚いた目で見つめた。

ランスが笑っていう。
「あとで、昼寝しましょう」
コトネはくすり、と笑うと頷いた。





20100306
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