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「ありがとね」
家を出る前に見たときよりも、また一段と精気がないように感じた。 わざわざベッドから抜け出て出迎えに来てくれたので、アレンは慌てて彼をベッドへと戻した。
「キッチン借りてもいい?」 「うん。何作ってくれるの?」 「おかゆと野菜スープ。元気出るよ」 「そう。ありがと」
ラビはにこりと笑って、赤い革表紙の本を読み始めた。 金の縁取りで、とても綺麗なクラシカルな本だ。フランス語で書かれていて、僕には読めやしなかったけれど。 キッチンへ向かおうかと思ったところで、ラビが口を開いた。
「アレンはいつも俺のそばにいてくれるね」 「あ、あの、迷惑…かな」 「違うよ。嬉しいんだよ」
優しい眼差しでアレンを見つめる。
「これからも、そばにいてくれる?」 「え?」 「ずっとずっと、俺から離れないでほしいんさ…アレン」 「え、あの…それって……」
答えるが早いか否か、気付いたときにはラビの腕の中にいた。
逞しい腕、熱で熱い体温と、甘いムスクの香り。
アレンは耳まで赤く染め上げて、少したじろいでから、自分よりもひとまわりか、ふたまわりも大きなラビの体を抱きしめ返した。
「あの、僕も…ラビと一緒にいたい…です」 「…アレン」
顔をあげると、額に優しいキスが降ってきて、それがなんだかくすぐったくて、アレンは心地良さげに瞳を細めた。
「風邪、うつしたくないから、ここはまた今度…」
ラビは笑ってアレンの唇を親指でなぞる。それだけのことで何故か体の芯が小さな熱を持ち、アレンは恥ずかしげに俯いた。
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