5


「ありがとね」

家を出る前に見たときよりも、また一段と精気がないように感じた。
わざわざベッドから抜け出て出迎えに来てくれたので、アレンは慌てて彼をベッドへと戻した。

「キッチン借りてもいい?」
「うん。何作ってくれるの?」
「おかゆと野菜スープ。元気出るよ」
「そう。ありがと」

ラビはにこりと笑って、赤い革表紙の本を読み始めた。
金の縁取りで、とても綺麗なクラシカルな本だ。フランス語で書かれていて、僕には読めやしなかったけれど。
キッチンへ向かおうかと思ったところで、ラビが口を開いた。

「アレンはいつも俺のそばにいてくれるね」
「あ、あの、迷惑…かな」
「違うよ。嬉しいんだよ」

優しい眼差しでアレンを見つめる。

「これからも、そばにいてくれる?」
「え?」
「ずっとずっと、俺から離れないでほしいんさ…アレン」
「え、あの…それって……」

答えるが早いか否か、気付いたときにはラビの腕の中にいた。

逞しい腕、熱で熱い体温と、甘いムスクの香り。

アレンは耳まで赤く染め上げて、少したじろいでから、自分よりもひとまわりか、ふたまわりも大きなラビの体を抱きしめ返した。

「あの、僕も…ラビと一緒にいたい…です」
「…アレン」

顔をあげると、額に優しいキスが降ってきて、それがなんだかくすぐったくて、アレンは心地良さげに瞳を細めた。

「風邪、うつしたくないから、ここはまた今度…」

ラビは笑ってアレンの唇を親指でなぞる。それだけのことで何故か体の芯が小さな熱を持ち、アレンは恥ずかしげに俯いた。










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