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「気持ち悪いよね」 「うん」
登校したアレンは、まずは慎重に下駄箱を開けた。今日はゴキブリの死体が数匹だ。たいしたことはない。上履きにケチャップをぶちまけられていたことのほうが困るレベルは高かった。なんせ履くことができないから。
慣れた手つきでゴキブリをかきだして、何食わぬ顔で教室に向かった。
今日は机はーーー、ああ、在る。まだいいほうだ、いつもなら、机が無いのだから。在るということはつまり、中にはおそらく、刃物か、虫か、ゴミか、とにかく何かしら「きれいでないもの」が入っているはずだ。教室の誰もが僕の存在を無視してチラリともこちらを見ずに談笑しているというのに、誰より手の込んだいたずらをこうむっているのは僕なのだから笑える。
机の中を見た。
硝子の破片がたくさん入っていたので、溜息をついて、新聞紙を床に敷き、机を傾けてそれをすべて流し出した。
怪我すればよかったのに、とクラスの中で誰かが言った。
よかったのに?よくないと思うけど、とアレンは内心ぼやいた。何がいいんだろう。本当に。
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