独占欲




「馬鹿兄貴、」
「そんなこと言っていいと思ってるの?」
「悪いのはそっちネ。
私は何も悪くないアル!」


神威に向かって投げた枕は本人には当たらず、ぼすん、と音を立てて壁に当たって床に落ちた。ああもうほんとうに腹立たしい。憎たらしい笑顔を浮かべるこいつも、こいつに一矢報いることが出来ない自分も、何もかもが勘に障る。



学校から帰ると、滅多に家に居ないはずのこいつが家に居て、にこにこと何を考えているかわからない笑みを浮かべたこいつの傍らには見るも無惨な姿になった、花柄の傘だったもの、が落ちていた。あれは間違いなく以前銀ちゃんが買ってくれたものだ。安物とはいえあのケチな銀ちゃんが珍しく買い与えてくれたものだからとても大切にしていた、のに。
感情のままに男に殴りかかればいとも容易く抑え込まれてしまい、やり場のない怒りだけが脳髄を支配した。


どうして、と投げかけても神威は神楽が悪いんだヨ、の一点張り。何をどうしたら私が悪いことになるのだろうか。昔からそうだったが、コイツの考えていることはよくわからない。思考回路が普通の人間とは違うのだろうか。妹の私ですら理解出来ないのだから、あの阿武兎とかいう男はさぞ苦労していることだろう。面識はないがほんの少し、同情する。


「俺以外の男から貰った物なんか大事にしないでヨ。」
「は?」
「神楽の大切な物は俺だけで十分でしょ?」


ああ、そういうことか。要するにコイツは私が銀ちゃんから貰った傘を大切に使っていることが気に入らなかっただけ、ということらしい。なんて人騒がせな野郎だ。自分の兄貴じゃなかったらとっくの昔にボコボコにしていたかもしれない。
なんて子供じみた独占欲だろうか。傘を贈った男に嫉妬するならまだしも、物にまで嫉妬するなんて。



「………新しい傘買ってくれるなら許してやってもいいアル。」
「しょうがないなあ。」




加速する独占欲
(許してしまう私もどうかしていると思うけれど、)




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