パソコンを起動してソフトをダウンロードする。


最初どれからダウンロードするか迷ったが、MEIKOからダウンロードすることにした。


長くかかりそうだったので、いったんパソコンから離れ飲み物をとりにリビングへとむかった。

今日は朝から気温が低く、窓ガラスには気温差により結露が多くできている。

ケトルに水を入れ、お湯を沸かす。

カチッとケトルのボタンが上がったのと同時にパソコンのある部屋から、ドサッと何かが落ちる音がした。
まるで人が段差から飛び降りるような。

この家には僕しかいない。

圭祐さんはもう帰ったはずだ。

犬は飼っているけど、僕の足元にいる。
それ以外には動物はいない。


『(なんだろう…)』


ゆっくりと部屋のドアを開ける。
パソコンの前の椅子に、茶髪の赤い服を着たお姉さんが座っていて、その周りには青・水色っぽい緑・黄色・ピンク。


何処かで見たことのある集団。

そうだ、
ソフトの表紙に描かれていたイラストそっくりじゃないか。


ということは、椅子に座っているのは…MEIKO?


『(っつ…)』


半開きにしたドアの向こうで動けずにいた僕と、緑の子(初音ミクだろうか)の目がかち合った。


「あっ!マスターっ」


その一声で全員の視線が僕を捉える。
こんなに大勢の人に一斉に見られるというのは、いつぶりだろうか。


『(え、あ・・・)』


何も言えずにオロオロしていると、初音ミクは僕の前に来て僕の手を取った。


「初めまして、マスター。私、初音ミクです。これからよろしくお願いします!」


ニコッと、まるで花が飛んでいるような可愛らしい笑顔。
ミクの自己紹介を皮切りに、他のボーカロイドたちも自己紹介を始める。


「私はMEIKO。よろしく、マスター」
「僕はKAITOです」
「鏡音リンです!」
「俺は鏡音レン」
「私は巡音ルカです、マスター」
「俺はMEIKOの亜種のMEITO」
「AKAITOだ、KAITOの亜種」
「巡音ルキ、ルカの亜種だ」
「俺は初音ミクオ!ミクの亜種だよ、よろしく」


ニコニコと、みんなの笑顔は耐えない。
僕も自己紹介を・と思ったけれど、声がでない。

MEIKOさんの座っているところまで行き、パソコンの画面をWordに変え自己紹介の文を打つ。


『(初めまして。
  今日から貴方がたのマスターになる恒です。
  僕は声が出せません。)』


ここまで打ってみんなを見ると驚いた顔をしていた。
当たり前か、

でも、声の出ない僕が貴方たちを受け入れたのには外でもない、


『(だから、







  僕の声になってくれませんか?)』



また歌う力が欲しかったからだ。


「マスター!」


ミクが僕の手を握る。
MEIKOさんたちもその上に手を重ねる。


「「「「「「「「「「もちろん!!!!!」」」」」」」」」」


揃って言われた返事は、


僕が一番欲しかったものだった。




二本足












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