あの子の、


恒の歌を聴くのが大好きだった。




何の抵抗もなく胸に飛び込んでくる歌声が、何とも言えないぐらい大好きだった。







その恒の声は、彼の両親と共に失われた。

声を失った彼は、部屋に引きこもるようになった。



学校にも行かなくなり、外界との関わりを絶っていった。
一緒に暮らそうかと言っても、首を縦には振ってくれない。








そんなとき、友人にボーカロイドを紹介された。
此奴も俺と同じ恒の父親の部下で、一緒に自宅に遊びに行っては趣味のギターを抱え、恒と歌ったものだった。



「自分で歌えはせぇへんけど、恒くんにどうやろか」




そう言って差し出されたパソコンソフト。

一人で部屋に居ることが大半の恒だ。
少しでも気分転換になればと持ってきた。


これで少しでも、この子の心にあったかい何かが出来ればいい。
もう、藁にもすがる思いだった。



ねぇ、恒。

俺じゃあ、君のココロには入れないかい?




抱き締めたいから










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