それは私のおかげですか?
ソファーで制服姿のまま横になっている○○が、帰宅して直ぐに視界に入った。だが、専ら見慣れている風景だったため、特に声をかける必要も無いだろうと思い目の前を通り過ぎようとする。が、彼女の手が私の服を掴み、それを阻止したのだった。横目で睨むように見れば、○○のスカートが少しめくれていて、今にも見えそうになっているではないか。熱くなる頬を誤魔化すように、近くにあったブランケットを投げつける。
「んー、何すんのよー」
「こんな所で寝ていては風邪を引くぞ。部屋で寝ろ」
だが、そんな気はさらさら無いのか身動き一つしない。私の配慮を拒否され、眉間に皺が寄る。服を握る手をどうにかしようと思ったが、相当眠そうな彼女を見て溜め息が出る。私が観念してその場に座れば、服を握っていた手が今度は私の手を握った。此方を一度も見ていないのに大したものだ、と思わず感心してしまう。
「また、夜更かしか」
「だって、復習…」
「体調を崩しては元も子もないだろう」
「……」
急に黙ってしまった○○にやっと寝たか、と安堵する。静かに立ち上がろうとしたが、小さな手が力を込めてきたため動きを止める。二度目の溜め息を吐くと、消え入りそうな声で彼女が話し始めた。
「…元の世界に、帰りたい?」
「…人間の姿は不便だ」
「だよねぇ」
それっきり、また黙ってしまった彼女を無言で見つめる。いきなりの質問に少々驚いたが、嘘はついてはいない。バリアンの姿とは違い、直ぐに息絶えてしまう人間は面倒だと常々思っていた。それに、我々にはバリアン世界を救うという使命がある。こんな所に長居するわけにはいかないのだ。
……だが、
「この世界も、悪くはない」
私の手を握る力が、少し強まった気がした。
相互記念に、アキ様へ捧げます。『悠久時計』様の逆トリップミザエルでほのぼの、というリクエストでしたが、それらしくなっていないような…すみません。
相互リンク、有り難う御座いました!
130525
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