正体は、目から流れたもの


涙を浮かべ、頬を紅潮させ、鼻をすすりながら俺を睨む○○は見慣れていた。いつもなら逆に加虐心を煽られ、追撃の手を考えるのだが、今日はその「いつも」とは違った。目の奥からの本気の嫌悪に唾を飲む。

「ベクターなんて嫌い」

何度となく聞いた言葉だが、こればかりは慣れなかった。おまけに今回は「いつも」と違うのだ。
心臓の音がどくん、どくん、と大音量で脳内に響き、額からは汗が流れる。
俺に背を向けて離れていく○○を呼ぼうとしても、喉からはヒュー、と乾いた息しか出ず、呼吸も困難な状態だったのだと気付く。
伸ばしかけた手をだらんと下げ、手のひらを見つめるとぽたっ、と水滴が落ちてきた。

へwwタwwレww
誰だこいつ。
130512

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