命令違反は貴方のせい
真っ赤な空を見ながら、人間界に向かった主を待つ。タキオンを手に入れた彼が負ける筈が無い、と自信満々に見送ったが、一人になった途端、不安な気持ちが漏れ出す。
私を従僕として側に置いて下さるミザエル様。主である彼に、禁忌の感情を抱いてしまった自分を呪ったが、表に出さないことを誓い、どうすることも出来ないこの恋に蓋をした。
「…○○」
「!?」
想い人の声が私の名を呼ぶ。急いで振り向くと、最後に見た時と変わらないミザエル様に思わず涙が溢れた。
「何故泣く」
「す、みません…っ。ご無事で何より、です」
只でさえ、不安のせいで自制が利かないのに、優しく頬に触れてくる手に、愛しさが声と一緒に出てきそうになる。
「タキオンの召喚には失敗した」
「そう、ですか」
「だが、フォトンドラゴンをこの目で見ることが出来た」
無邪気に笑うと、私の手を取るミザエル様。笑顔を見たことと相まって、顔と手が熱くなるのが分かる。
「ミ、ミザエル様!?」
「○○、寝てないのだろう。早く休むが良い」
「しかし、」
「私の命令だぞ」
威圧的に話すミザエル様に何も言えず、黙って従うことにした。しかし、身体中が熱を持ち始めたので、暫くは寝付けそうにありません。
130510
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