あなたが望むなら 06
万斉の足音が完全に聞こえなくなり、二人の間には再び沈黙だけが流れる。また子と高杉は、意を決して口を開き、
「あの――」「おい――」
――ハモった。
「…………」
余計に気まずい雰囲気になる。
「……あ、晋助様からどうぞ」
また子が遠慮がちに声を出した。
「いや、おめェから言えばいい」
「ええっ、晋助様からで」
「お前が先に言えばいいじゃねーか」
「そんなっ……」
「お前から言わねーと、俺も言えねェ」
「なっ……分かったッスよ」
幼稚な言い合いに終止符を打ったのはまた子だった。これじゃあキリがないと思ったが、何故か負けた気分になりつつも。
「私は晋助様のおっしゃった通りに、晋助様に近付かないようにしてきたッス。でも、そんな自分はただの抜け殻のようで……。私は、晋助様と共に生きることで、強くなれるんス。晋助様のお側に居られなければ、私の存在価値なんて無くなってしまうんス……」
途中から涙声になるまた子の声を、高杉の背中はじっと動かずに受け止めている。
「晋助様の隣に居るのは私がいいんです……晋助様をお守りしたい…………」
また子の、鼻を啜る音が聞こえた。