あなたが望むなら 03
「また子殿」
部屋の戸をスッと開け、万斉が顔を覗かせる。布団の中へ入っていたまた子は、もぞもぞと動くことで応えた。その様子を見て、万斉は溜め息をつく。
「まだ晋助と会ってないでござるか」
あれからすっかり外に出なくなったまた子の様子を見て、万斉はサングラスの奥から心配するような呆れたような瞳を見せた。
「……意地の張り合いでござるな」
「……晋助様に良しと言われるまで、こうしているだけッス」
「体がなまるでござるよ」
「いいんス。どうせ役立たずッスから」
とにかく否定的なまた子の言葉に、万斉はまたもや溜め息が出た。そして諦めたのか、静かに戸を閉じた。
戸の向こうで、遠ざかっていく足音。
また子はそれを耳で確認しながら、自分の瞳から何かが流れるのを感じた。
「晋助様…………」
会いたい。
話したい。
一緒に、戦いたい。