兄弟って似るか似ないか両極端 01
日も暮れて、細い三日月がうっすらと空に輝き始めた。
しかし、建物と建物の間で丁度道路から死角になっているそこまでは、その明かりすら届いておらず、辺りは真夜中のような暗がりだった。
そこには数十人もの人間がゴミのように転がっており、辺りは鼻がねじれるような異臭が立ちこめていた。
その匂いに青年は少し顔をしかめながらも、二本の刀を鞘にしまった。
「派手にやったなァ」
そこへいくつかの人影が現れる。
「高杉さん……」
「反乱者はもう全員殺ったのか?」
「はい。皆さん総出で俺のことをご覧になってたんですか?」
青年が不敵な笑みを浮かべ、高杉達のほうを見る。
「とりあえず力量を拝見、といったところです」
変人謀略家と呼ばれている鬼兵隊一の策略家――武市変平太がそう言って歩み寄ってきた。
「それで……どうでしたか?」
青年が武市に挑戦的とも見える笑みを浮かべ聞いた。
「正直、予想以上でしたね。二本の刀も上手く扱えているようですし……そこに居る猪女と組ませれば、かなりのものになるでしょう」
「誰が猪女っスかァァァァ!!」
「お褒め頂き光栄です」
青年は軽く礼を言って、また子達の奥で静かに佇んでいる人物に声をかけた。
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