シリアスなんてくそ食らえだ! 02


「父上が……そんな…………」


 口を半開きにしたまま、片手で顔を押さえ呟く山崎。真選組に惹かれたのも、役人として世に尽くす父親の背中を見てきたからだ。その衝撃は、他人から見ても想像に固くない。


「山崎……大丈夫か?」


 本気でショックを受け茫然自失となっている山崎に、近藤が心配そうに声をかけるが、大丈夫でないのは火を見るよりも明らかだった。


「すみません、ちょっと顔洗ってきます……」


 山崎が弱々しく立ち上がり、目元を手で隠しながらそう言った。


「……ああ」


 土方が静かに返事をすれば、山崎は戸を開けて小走りに去っていった。


「………………」


 山崎が出ていったことで、より一層気まずい雰囲気が辺りを包む。万事屋メンバーは、居心地が悪いからか黒目をあちらこちらに動かして様子を伺っている。



「……真選組の皆さん」


 山崎が出ていったあとの戸を思い詰めた目で眺めていた円が、真選組の三人に向き直った。


「見ての通り今お話ししたことは、兄も――もちろん私も今まで知りませんでした。だから、退のことは――」

「分かってるさ」


 真摯な瞳で話す円を遮り、近藤が一度大きく頷いた。


「山崎は今までずっと、真選組のために国のために命を張って戦ってきた。たとえその父親が鬼兵隊だろうが何だろうが、その頑張りは変わらんよ。それなら俺達ァそんな山崎自身を信じるさ」


「局長さん……」


「それにそんな真っ直ぐな目で見られちゃァ、疑うことなんか出来ぬものよ」


「……ありがとうございますっ!」


 温かい近藤の言葉に、円は目尻を涙で輝かせながら頭を下げた。

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