Halloween | ナノ







『そんな大量に、何の本買ったんですか?』

「いろいろな」

『勉強家なんですね』



叔父さんの本屋で、叔父さんと光くんも交えていろいろ話をした。
日も暮れてきた頃、吸血鬼さんはお目当ての本を何冊も買って、お店を出た。



「人間、死ぬまで勉強やからな…俺、吸血鬼やから死なんけど」

『それ、笑い所なんでしょうか…?』



吸血鬼ジョークなのか、大量の本が入った紙袋を両手に持った吸血鬼さんに、どうリアクションしたものかと、一瞬考えてしまった。



「知識は人生の財産や。知識欲だけは常に満たされへんなぁ」

『結構真面目な事言いますね』

「何その普段、俺が不真面目やみたいな言い方…」



「吸血鬼かて傷付くねんで?」と笑う吸血鬼さん…そういう所が、人をからかっているようにしか見えなくて。
掴み所の無い人って、こういう人の事を言うんだろうな…



『そう言えば、叔父さんとはどういう関係なんですか?』

「え?ああ…オサムちゃんな、」



吸血鬼さんは少し言いにくそうな苦笑いを浮かべて、話し始めた。



「オサムちゃんは、俺が吸血鬼になった頃にお世話になった人や」

『吸血鬼さんが吸血鬼になった頃?』

「ああ…俺がこの世の中で生きていく為の術を教えてくれたんや。光も謙也も、ここら辺のそういう血を引いとる奴は、みんなオサムちゃんにお世話になっとるはずやで」

『へぇ…』



まさか自分の叔父さんが、そんな事をしていたなんて思わなかったし、吸血鬼さんの口振りに、吸血鬼さん達みたいな人がまだ他にも居るという事にも驚いた。



『…で、叔父さんと出会ったのは何年くらい前なんですか?』

「確か…って、そうやってまた年齢聞き出そうとする…」

『バレましたか…』



困った様に笑う吸血鬼さん…笑っているのに、何故か悲しそうに見えた。
その顔に、吸血鬼さんの過去が気になったが、私が踏み込んではいけない領域な気がして、誤魔化すしかなかった。



□□□□□□



『…あれ?』

「おお、名前ちゃん、おはようさん」

『おはようございます…今日は起きてるんですね?』



朝起きると、キッチンには吸血鬼さんが立っていて、鍋の味噌汁をかき混ぜていた。
「顔洗って来」と言われるがまま、洗面所へ。

身支度を整えて食卓に行くと、美味しそうな朝食が…今日は和食だ。
席に着くと、向かい側に吸血鬼さんも座った。



「これ、お弁当な」

『毎日ありがとうございます。いただきます』

「いいえ。ほな俺も、いただきます」



二人で手を合わせ朝食を食べる。
あれ?と、絵に描いたような朝食を食べる吸血鬼さんを見て気が付いた。



『朝ご飯、一緒に食べるのって初めてですね』

「せやな。いっつも俺、寝とるもんな」

『その割に、私が起きると温かいご飯が出来てますよね…』

「名前ちゃんが起きる直前に作るようにしとるからな…起きる頃にはダウンしとるけど」



だからいつもソファーに寝ていたのか…と、私にそこまでの気を使ってくれている吸血鬼さんに、日に日に罪悪感が募る一方…
勝手に押し掛けられ、勝手に私のお世話をしてくる吸血鬼さんを怪しんで退治したりもしたが…結局、私は吸血鬼さんに任せっきりなのだ。



「昨日、久々にオサムちゃんに会うて、昔の事思い出したら寝られへんようになってもうて…」

『え、じゃあ寝てないんですか?』

「名前ちゃんの事見送ったら寝るから大丈夫」

『でも…今日、お仕事は?』

「仕事?ああ、辞めたで」

『……はい?』



前にもこんなやり取りをした気がする…なんて考えていたが、ハッと我に返った。



『な、何でですか…て言うか、お金…私の実家からの仕送りじゃ、二人で生活できませんよ?』



私がバイトもせずに一人暮らしができるのは、親の所有するマンションで家賃も無し、光熱費は実家からの引き落とし、食費や被服費は親からの仕送りがあるから。
環境は恵まれているが、月々に振り込まれる生活費は、一人で生活するにはギリギリの額…

吸血鬼さんが来てからの豪華な食事は、吸血鬼さんが勝手に買ってきたものばかりなので、寧ろ吸血鬼さんのお財布を心配していたが…
その吸血鬼さんの収入源が無くなるとなると、話が違ってくる。



「大丈夫大丈夫、金ならあるから」

『でも…』

『たぶん俺、名前ちゃんちより金持ちやで?』

「そ、そうなんですか?」



本気か嘘かわからない言い方に、不安を抱きつつも、吸血鬼さんが大丈夫と言うなら…と、頷いておいた。



□□□□□□



『ハァ…』



大学の廊下を歩く私は、レポートを持って溜息を吐いた。



(あの先生、苦手なんだよね…)



立ち止まった私の目の前には、研究室の扉…
ここでこうしていてもどうしようもないと、意を決して研究室の扉をノックしようと、手を上げた瞬間、扉の方が先に開いた。


『っ!』

「早よ入りや、名字さん」

『お、忍足くん!』



開いた瞬間、私と確認するよりも早く私の名前を呼んだ忍足くんに、匂いでわかったんだろうと、聞くまでもなくわかった。



「なんや、レポートか?」

『うん、忍足くんも提出しにきたの?』

「いや、俺はまだなんやけど…」

「謙也〜、そいつ誰やねん?」

「謙也くんのカ・ノ・ジョ?」



忍足くんに促されるまま部屋に入ると、奥から聞き慣れない声と私の苦手な先生…
その人に「今話した名字さんや」と忍足くんが言い、私の話題とは何の事かと首を傾げた。



「ああ、お前が噂の名字さんか…」

『えっと…一氏くん、だったよね?』

「何や、俺の事知っとるんか?でも生憎、俺は小春のもんやから諦めてくれ…」

『………へ?』

「あら名前ちゃん、レポート持ってきてくれたのね?お疲れ様☆」

『あ、はい…』



聞き慣れなかった声の主は、同じ学年の一氏ユウジくんだった。
学科が違うので、普段の交流は無かったが、たまにモノマネを披露している所を見かけた事もあるし、そのモノマネのクオリティは大学内でも有名だった。

そんな一氏くんのよくわからない発言を遮る様に、私に話しかけてきた金色小春先生。
金色先生は…はっきり言うとオカマっぽくて、生徒には人気だが私は苦手。



『私の話題って、何?』



レポートを渡し、早速忍足くんに私の話題が何なのかを訊いたが、答えたのは金色先生だった。



「名前ちゃん、クラリンと同棲してるんですって?羨ましい〜っ!」

『く、くらりん?』



何の話かと混乱していると「蔵ノ介の事や」と忍足くんが教えてくれ、クラリンというあだ名に納得した。



『え…吸血鬼さんの事知ってるって事は…』

「あ、俺は吸血鬼ちゃうで?狼男や」

「アタシは普通のニ・ン・ゲ・ン☆」

『そ、そうですか…』



またもや身近な人が人間じゃなかったり、それに関わる人間だったりで、最早驚きすらしなくなってきた。



『それで、ここで集まって何してたんですか?』

「小春は狼男が満月の夜に暴走せえへんようにする、薬を作ってくれてんねん」

「せやからユウジや俺は、小春の研究に協力しながら、その薬を貰ってるんや」

『そうだったんですか…』



ただ、自分の通っている大学の研究室で、そんな研究をしていたのには驚いた。



「で、クラリンとの生活はどないな感じなの?ちゅーか、二人はお付き合いしてはるん?」

『お、お付き合いなんて…吸血鬼さんが勝手に私の食事のお世話をしてくれてるだけですよ』

「あないイケメンでええ男と一緒に住んでて、まさかお食事以外何も無いやなんて…それやったらクラリン、アタシに頂戴!」

「浮気か!かみ殺すで!」

『あ、あの…』

「この二人の事は適当に流しとき…」



金色先生と一氏くんの異様な関係性にかなり引いていると、忍足くんが呆れたようにそう言ってくれた。

『はぁ…』ととりあえず頷いてみると、ノックも無しに扉が勢い良く開いた。



「邪魔するで〜!」

「あら金太郎さん、いらっしゃい」

「入る時くらいノックしろや、金太郎」

「ごめんごめん…あり?その子、誰?」



大きな声で入って来るなり、私を見つけたその金太郎さんは、長めの赤髪で、ヒョウ柄の服を着た男の子…と言っても、身長は私と同じ位。



「この子は名前ちゃん言うて、今はクラリンと一緒に住んどる人間さんよ☆」

「え、白石と住んでるん?」

『白石?』

「蔵ノ介の本当の名字や。あいつ、仕事変える度、名字だけ偽名使うから」

『へぇ…白石蔵ノ介…』



やっぱりヴァンパイアにしては、とても渋い名前だな…なんて思っていると、金太郎さんが近付いてきて、手を差し出した。
その手を取って握手すると、ニコッと笑顔を見せた。



「僕、遠山金太郎言いますねん、よろしゅうな!」

『私は名字名前です。ここの大学に通ってます』

「ほな俺よりお姉さんや!」



じゃあまだ高校生くらいなのかな?と思っていると、金色先生が「薬取りに来たのかしら?」と聞いた。



「せやで。ちゃんと飲まんと、オサムちゃんがうるさいから…」

『やっぱり皆さんも叔父さ…オサムちゃんの事知ってるんですか?』

「何や、名字も知っとるんか?」

『私の叔父さんなんです』

「マジかいな!皆さんも、ちゅー事は…」

『叔父さんとの関係も、光くんの事も聞きました。二人とも、忍足くんに会いたそうでしたよ』

「そう言えば、最近全然会うてへんなぁ…」



忍足くんの言葉に、「俺もや」と言う一氏くんに、頷く金色先生…やっぱりみんな繋がってるんだと思うと、不思議な気分になった。



『ちなみに、金太郎くんは…狼男なんだよね?』

「せや。細かく言うと、狼男と人間のハーフやで」

『光くんみたいな感じですか…』



机の引き出しから薬らしき物を取り出した金色先生は、それを3人に配りながら言った。



「ここまで知っちゃったなら、名前ちゃんももう私達の仲間ね☆」

『え?』



金色先生の言葉に「寧ろ、仲間になってもらわんと」と言う一氏くん。



「俺らの事、バラされたら困るしな」

『ば、バラしませんよ!』



吸血鬼や狼男が実在した、なんてバラした所で、私の頭が疑われるだけだし…と考えていると、金色先生は私にも3人と同じ薬をくれた。



「この子達の事で何か困った事があったら、オサムちゃんかアタシの所に来なさいね?」





狼男の巣窟





「ん?この薬…どこで手に入れたんや?」

『ああ、金色先生に貰ったんです。忍足くんと一氏くん、金太郎くんにも会いましたよ』

「どうりで名前ちゃんから獣の匂いがすると思たわ…」

『えっ!?く、くさいですか?』

「謙也と金ちゃんと、ホモのにおいがするわ」

『…お風呂入ってきます』



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端折り過ぎてわけわかめ。


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