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初めての出会いは夏大会だった。そして二度目の出会いは偶然、本当に偶然で、場所はバッティングセンターだった。
何回かバッターボックスに入って練習して、少し休憩でもしようかとバッターボックスから出たとき、自販機でスポーツドリンクを買っていた西浦のマネジさんを見つけた。無意識に俺は声をかけていて、俺に気づいた西浦のマネジさんは気まずそうに俯き、しばらくして顔をあげお辞儀した。俺たちの甲子園の夢を閉ざしたのは西浦であって他のどこの学校でもない。だからこそ、マネジさんは気まずさから視線を逸らしたんだろう。声をかけるべきではなかったかもしれないと今さら後悔した。
マネジさんはしばらく黙っていたが俺をまっすぐに見つめて謝ってきた。

「…すみません」
「なんで、謝るの?」

そう問いかけると、更に目を見開いて困ったような顔をした。

「桐青の方達も西浦の皆と同じ夢を追いかけていたはずです。私だったら、もし西浦が負けたら相手校のことよく思えません。だから桐青の方達も西浦のことよく思ってないだろうと思って…」

西浦のマネジさんは俯きながらぽつりぽつりと小さな声でそう言う。マネジさんもマネジさんなりに色々相手のことを考えているんだなと思った。自分のとこの学校が勝って嬉しいという気持ちと同時に相手の学校の気持ちも考えるなんて俺にはそんな器用なことはできないと思う。西浦のマネジさんはすごい素直で優しい、いい子だ。

「気にしないでいいよ、俺達は正々堂々と戦えてそれだけで嬉しかったし」
「あ、ありがとうございます」

さっきとは違って明るい笑顔を浮かべた。表情がコロコロと変わって感情豊かだなと思った。こんないい子のいる学校を恨む理由なんて一つもない。
俺は今できる一番の笑顔を浮かべて口にした。

「甲子園行ってね」


正直な彼女

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