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今日篠岡さんが練習半日だと言っていたから俺は練習後急いで西浦まで会いに来た。会いに来ることは篠岡さんには言っていない。サプライズにして篠岡さんを驚かせたかったからだ。だが流石に校内に入る勇気はなく門で待っているとすぐに篠岡さんはやってきた。ただし、一人ではなく西浦野球部員と共に。篠岡さんは俺の姿を視界に捉えると当たり前のように驚き俺に小走りに駆け寄ってきた。部員たちは俺の顔を思いっきり睨みつけてこっちに近づいくる。あ、やばいかも。

「高瀬さんどうしたんですか?」
「今日練習半日って言ってたから会いに来たんだけど、今からご飯食べに行かない?」
「はい!嬉しいです!」

俺がそう口にした瞬間篠岡さんは瞳をわかりやすいほど輝かせて頷く。ほんとこういうとこ可愛いなと思う。普段はマネージャーとしてしっかりしないとって思っているからか、甘えるとかしてくれないから。こういう女の子っていう顔を見れると嬉しくなる。できたら二人きりに今の顔見れたらなお良かったんだけど。さっきから西浦野球部からの視線が痛い。まあ、お姫様のように可愛がっていたマネージャーに男ができたんだからそんな顔になるのはわかるけど。でも正直気分悪い。少しだけ痛い目見せてやってもいいよな?

「あとは責任持って俺が千代を送り届けるんで、心配ないですよ」
「…あっそ、で?」
「千代連れてきますね、ほら、千代行こう。…失礼しました」

見せつけるように親しげに千代の指に自分の指を絡めて、千代と下の名前を呼び捨てにする。そしてギリギリまで顔を近づけて微笑みながら「行こう」と口にすれば千代は頬を真っ赤に染めて照れ「近すぎです」と小声で俺に言った。そんな姿も可愛くて思わずその場で抱きしめそうになる腕をなんとか抑え、俺は部員に会釈をして千代を連れ去った。
あいつらの間抜け面と言ったら最高傑作だった。普段むすっとしてる西浦の捕手でさえクールな表情を崩して俺たちを見ていた。かなり笑える。未だにこみ上げてくる笑いを必死で押さえ込んでいると篠岡さんが何か言いたげに俺を見つめている。

「高、瀬さん。あの、さっき私のこと名前で…?」
「ああ、つい。嫌ならもう呼ばないけど、どうする?」

少し意地悪な聞き方だと思った。でも羞恥に頬を染める篠岡さんが可愛すぎて、やめる気は起きない。篠岡さんの口で直接聞けたら嬉しい。可愛らしい声で、俺の耳元に囁いてくれればいいな、と。俺は今からニヤけそうになる頬を両手で挟んでなんとか平静を保った。


どうして欲しいの?

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