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「千代ー」
「あ、はーい…って本山さん?!」
「うん、俺は本山ですよ」

突然押しかけたせいで千代は驚いて目を見開く。大きな瞳が更に大きくなった。その大きな瞳に俺を映した千代はまだ動揺を隠しきれずに周りの視線を気にしてあちらこちらを見ている。さらに焦った千代はベンチに足を引っ掛けたり書いていた日誌にシャーシンで穴を開けてしまったり。普段見られない姿が見れて嬉しいとか言ったら怒られるんだろうな。でもなんか、かわいい。

「な、何でここに?ていうより部室よく入れましたね。外監督いましたよね?」
「彼氏って言ったら普通に入れてくれた。それより千代ちょっと外の空気吸ってこようよ」
「え、でも、…阿部くん、5分だけ時間ちょうだい!すぐ戻ってくるから!」
「ああ、了解」

困ったような表情を浮かべた千代だけど俺のお願いを断ることはしない。阿部いう男との約束より俺との時間を選んでくれた。でもまあ阿部という男に睨まれたのが気に食わないけど。多分こいつ千代のこと好きなんだろうな。…すげえ腹立つ。ここにいたらどんどん気分が悪くなりそうで、俺は急いで千代の手を引いて外に出た。背を向けた瞬間、いくつもの視線を感じたけど知らないフリ。

「あの、本山さんは今日どうして…?」
「千代に会いたくて。最近全然会ってなかったから。駄目だった?」
「駄目じゃないです!すごく嬉しいです。私も会いたかったので」

にへらと頬を緩ませる千代。頬は少しピンク色に染まっている。あーかわいい。どうしよう、かわいすぎ。もうぎゅっと抱きしめて離したくなくなる。まだ千代は仕事が残ってんのに。もうほんとやばい。このまま家にお持ち帰りしたいんだけど。…でも、我慢。千代は練習中にそういうことするの嫌いだから。
我慢した分だけあとで思いっきり抱きしめてやる。千代が嫌がっても離したりなんかしてやらない。


俺の恋人かわいすぎ!
(千代、後が楽しみだね)
(え?)

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