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トンッ

「うあっ!」
「えっ?」

桐青のキャッチャーである河合は恋愛経験はほとんど無く、女子の扱いが苦手であった。何を言ってあげれば喜ぶのか、どんな言葉が禁句なのか、全く分からない。そんな苦手を克服できぬまま迎えた人生初のデート。河合は当たり前のように緊張しており、今も少し手が当たっただけで、この驚きよう。手なんてつなげるはずがない。恋愛初心者であるため仕方ないことなのだが、河合は千代に呆れられてないかをとても心配していた。しかしそんな必要はない。千代はそんな河合を千代は可愛く思っており、河合のペースに合わせてくれていたのだ。
急がずゆっくり慣れていけばいいんですよと、千代は優しく笑って言った。

「あ、ありがとう。篠岡さん」

千代の笑顔で少し緊張がほぐれたのか、河合も今日初めて笑顔を見せる。千代が河合の笑顔を見れてホッとしたのもつかの間、自分のことが疎かになっていたせいで段差につまずき転びそうになる。きゃあと可愛らしい悲鳴に河合はすぐさま千代の腕をつかみ自分の胸に引き寄せた。

「あ、す、すまん!だ、だい、大丈夫か?!」
「はっ、はい。だ、大丈夫、です」

一瞬の出来事とはいえ、千代を抱きしめたことには変わりはない。河合は初めて抱きしめる女子の体の柔らかさや甘い匂いに軽くパニックを起こしていた。噛み噛みの言葉に千代も釣られて噛んでしまう。
しばらくお互いの顔は見れそうにない。


初デートぷち事件
(篠岡さん、軽かったな…)
(河合さんすごい力だったなあ)

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