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静まり返る数秒間が、随分と長く感じた。カカシ先生は私に最高の殺し文句をくれた後、そっと包み込むように抱きしめてくれた。まるで「俺を選んでくれてありがとう」と言うように。カカシ先生の優しくてあったかい腕の中で私は幸せをかみ締めていた。けれど綱手理事長の咳払いで我に返り、カカシ先生の腕の中から抜け出そうとしたけれどカカシ先生に腕を捕まれて、またカカシ先生の腕の中に逆戻り。「先生離して」と訴えようにも、私の顔は先生の胸に押し付けられているため不可能。何で離してくれないのか不思議に思って先生を見上げれば、ニコリと笑って、理事長の方を指差した。意味がわからないけれど、とりあえず振り向いた私の目に飛び込んできたものは―…

桜色の君、つかまえた

あきれながらも笑顔の理事長。処分をくだすときにするような表情ではなく、寧ろどこか楽しそうにも見える。何を考えているか全くわからなかった。

「私もそこまで鬼じゃないよ」
「え?あの、それじゃあ…」
「ああ。学園を去るまではしなくていいよ。ただし!校内での行き過ぎたスキンシップを禁じる!」

鬼のような形相で、理事長は口にした。でも顔とは裏腹に言葉からは、生徒への愛がたくさん詰まっているように感じた。けれどいくら生徒を愛しているからといっても、教師と生徒の恋愛を見て見ぬフリをするなんて普通はできない。なのにどうして、綱手理事長は…。
私のそんな疑問に気づいたのか理事長は私を見て優しく笑った後小さくつぶやく。「私と同じ思いはさせたくないんだよ」と。その言葉からは悲しみの音がたくさん聞こえてきて、何故か私の胸まで締め付けられるようだった。

***

あとからカカシ先生が教えてくれた。綱手理事長も以前教師と恋仲になったことがあって、それがバレたとき二人とも思い処分を受けることになってしまったことがあるって。本当に愛していた人と引き離された理事長は、どんな思いで私たちを見ていたんだろう。今になって、理事長の気持ちに気づいて涙が出そうになった。

「サクラ、泣いちゃ駄目デショ?綱手様達の分も幸せにならないと、綱手様に怒られちゃうよ」
「そう、ですね」
「…うん。これからも俺のそばでその笑顔見せて欲しいな?サクラ」

涙を必死で我慢して作った笑顔はきっとブサイクだったに違いない。けれどカカシ先生は私を愛しそうに見つめてくれる。そして優しい声音で私に語りかけるカカシ先生の腕の中で、私は綱手理事長達の分も幸せになることを誓った。

end.

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