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今私とカカシ先生は理事長室の前に来ている。何で呼ばれたのかは分かっているつもり。だって、カカシ先生が隣に居るのが何よりの証拠になるもの。きっと最近の私たちの行動が教師と生徒の関係を越えているものだったから、噂が広まって教師の耳にも入ったんだと思う。ていうか今までバレなかったのが逆に不思議なくらいね。

何だかんだいってもいい生徒

隣にいるカカシ先生は特に気にする様子もなく、何故か私の手を握っている。こんな状態で入ったら更に関係を疑われるのは分かっているはずなのに。私は普段使わずに有り余っている力を手に集中させてみた。

「いたたたっ。サクラ〜ちょっと強く握りすぎだよ。そんなに強く握らなくても先生離したりしないから…」
「どうしたらそうなるの?離してって意味で強く握ったの!」

むうと少し子供っぽく頬を膨らましながら言えばカカシ先生は何故かだらしなく頬を緩めて私を見つめる。なあに、と尋ねれば先生は緩みっぱなしの表情のまま「拗ねたサクラも可愛いなって思っただけ」なんて、理事長室前で余裕の発言。ああもうこの人、呼ばれた意味ちゃんと分かってるのかととても不安になる。でも、やっぱり先生は先生だった。理事長室に入る直前になって手を離して、表情も真剣なものになってる。私は急に緊張してきて、手が震えてきた。そんな私を見てカカシ先生は優しく微笑んで、「先生に任せて」って言ってくれて不思議と、カカシ先生に任せれば大丈夫な気になれた。
理事長室に入った途端、張り詰めた空気に私は苦しくなった。鋭い視線で私とカカシ先生を見つめてくる女の人…この人が綱手理事長。綺麗なのに威圧感がものすごくて、目が合うだけで支配されそうになる。けど突然の右手の温かさに私の意識は隣に居る先生に集中した。見上げればカカシ先生がいつもの優しい笑顔で「大丈夫」ともう一度口にする。まるで魔法の言葉のように私の心を軽くする。私は先生に微笑み返して頷いた。カカシ先生は笑顔の私を見て安心したように笑って、前にいる綱手理事長に視線を戻した。

「カカシ…呼ばれた理由を理解した上での行動か」

理事長は私とカカシ先生が強く繋がっている手に視線を移して、そう尋ねてくる。カカシ先生は何の戸惑いもなくはいと答えた。そして「これが俺の答えです」と強く、揺ぎ無い瞳でそう口にする。理事長は小さくため息をついたあと、私を見て「お前はどうなんだ」と尋ねてきた。
すぐに答えられなかった。私がカカシ先生に抱いている感情が恋かどうか分からなかったから。ただの憧れかもしれない、ただの気の合う先生ってだけかもしれない。だから私はただ俯いて「分かりません」と口にすることしかできなかった。

「俺が一方的に彼女を好きなだけですから、処分は俺だけにしてください」
「それでお前はいいのか」
「はい。自分の気持ちに嘘はつくぐらいなら、退職した方がマシですから」

カカシ先生のやさしい声が耳に響いた。何故か胸が苦しいぐらいに締め付けられる。どうして、こんな気持ち知らない。
先生のこと憧れでしかないなんてありえない。だって、今こんなにも先生のことで頭がいっぱいなんだから。きっと、私も先生のことが好きなんだ。先生と離れるのがつらいのもきっと同じ理由。好きだから、離れたくない。カカシ先生と、同じ気持ち。だったら、私も処分を受けるべきなんだ。

「…私も処分受けます」
「サクラ?!何言って、」
「私もカカシ先生と同じ気持ちなんです!だから、私も処分を受けます」

気づけばそう口にしていた。カカシ先生も理事長も私を見て驚いていた。
不思議と後悔はなくて、寧ろ心はスッキリしている。先生に満足した顔を向ければ呆れたようにため息をつかれたけれど、その後すぐに微笑んでくれて「もう絶対に離してやらないよ」なんて最高の殺し文句をくれた。

(サクラは最高に可愛い女の子で、最高に可愛い生徒だよ)

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