彼女はもう彼の腕の中

▽20歳設定


シカマルとサクラが上忍になってしばらく経った先月のある日、サクラはシカマルにプロポーズされた。シカマルらしい、決して甘い言葉ではなかったがサクラには十分だった。たまらなく嬉しくて、シカマルに思い切り抱きつくサクラにシカマルは大げさだってのなどと言いながらも嬉しそうに笑い、抱きしめ返した。

それから数日。懐かしの同期の面々が顔を合わせるとある居酒屋の個室。シカマルとサクラはいつ言い出そうかとタイミングを窺っていた。こっそりと机の下で手を握り合い、時々アイコンタクトを取ってみたり。中々言い出せないお互いを見て、小さく笑い合う。

「ねえ、本当に今日言うの?」
「せっかく同期が集まってんだ。今しかねえだろ?」

周りが騒いでいるといっても、会話が聞こえては困ると小声で喋るシカマルとサクラ。そんな二人が仲良さそうに見えたのか、ナルトとキバが嫌な絡み方をしてくる。酒の力もあってかいつも以上にしつこく強引な二人にシカマルはめんどくせえと一つため息をついた。だが同時に今が報告のチャンスだと、サクラを見て頷く。

「シカマル〜、サクラちゃんとすっげー仲いいじゃん?」
「お前ら付き合ってんの?」

シカマルの肩に腕を回してうざったいほど絡んでくるナルトとキバ。周りのいの達は二人の質問に「それはないでしょ」と手を横に振って笑う。

「この二人が付き合ってるわけないでしょー?」

いのの発言にシノが同意するように頷く。だがすぐにシカマルの爆弾発言に全員が驚愕することになる。
シカマルはゆっくりと深呼吸をした後、サクラの肩を抱き寄せて「結婚すんだよ俺たち」と笑って口にした。騒がしかったナルト達が一瞬で静かになる。相変わらず居酒屋は賑やかなままだが、ナルト達が借りている個室だけが静まり返っていた。遠くに聞こえるおっさん達の賑やかな話し声。最初にわれに返ったのはいのだった。

「ちょっとちょっと!!いつの間にそんなことになってたのよ!」

興奮気味にサクラの肩を揺さぶるいの。サクラはあははと困ったように笑いながら実は数年前から付き合っていたことを暴露する。いのはそんな前から付き合ってたことなど知らないために、サクラの口から出た言葉に驚くばかりであった。
周りの者はもうほとんどどこか遠くの世界にいってしまっているようで、元に戻るのはもう少し時間がかかりそうである。

「あー…まあみんなサクラのこと好きだったし、仕方ないわよ」
「え?そんなことあるわけないじゃない。きっとシカマルに結婚先越されたのがショックだったのよ」

クスクスとおかしそうに笑うサクラに、いのは心のそこからナルト達を哀れんだ。鈍感すぎるサクラに伝わることのなかった思い。きっと相当のものだったはずだ。これ以上二人がいたらいよいよみんなは壊れてしまうんではないかと思ったいのは二人に帰るように促した。滅多に休みが重なることないんだからこれからデートでもしてきなさい、と疑われないように最もらしい理由をつけて。二人はいのの気遣いに感謝して嬉しそうに店内から出て行った。それを見届けてからいのはゆっくりと個室を見渡す。まるで、地獄絵図だ。まるで人生の終わりのように絶望した表情で酒を飲むサスケ。体育座りをして顔を埋めているキバ。涙を猛烈に流し続けるリー。その他もろもろ。ひどい有様だ。いのは私の手にも負えないわとため息をつくと、自分の席に置いてあったバックを肩にかけ、自分の分だけ精算して店内を出ることにした。


彼女はもう彼の腕の中
(おめでとう、サクラの幸せを一番に祈ってるわ)


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