魔王な彼にだけは隠せない
▽修正作品
それほど問題児も多くなく、良い印象を持たれることの多い青春学園は今日も平和だ。それは学校全体の雰囲気に限らず、部活内での雰囲気も大変いいものとして、教師たちも日々安心して過ごしている。しかし校内でのトラブルは滅多におきないため、たまに起きる小さなトラブルに慌ててしまうというのも考え物だが。
***「はぁ…今日も平和だな越前」
「…気持ちわるいッス、桃先輩」
はぁと小さくため息をついたと思えば顔に似合わない随分とのんきな発言。そして緩みきった表情に声。隣で着替えていたリョーマはあまりの緩みきった様子の桃城を見てあきれた。しかし同時に、昨日まではいつもと変わらない様子でテニスをしていたはずの桃城の変わり様に、いったい何があったのだろう、と少し興味をもった。
興味を持ったのはリョーマだけでなく他のレギュラー陣も同様で、緩みきった表情の桃城を少し離れたところから見守っていた。各自、色んな予想をしてみるが全くそれらしいことは思いつかない。考えることに飽きた菊丸は思い出したように別の話題をふった。
「そういえば桜乃ちゃん今日告白されてたよん」
「またか…そういえば最近竜崎さんが綺麗になったってすごく噂になってるけど、好きな人でもいるのかな?」
菊丸の言葉に大石も思い出したようにそう口にすると、窓の外をボーっと見つめていた桃城の肩が揺れた。ほんの少しの、微妙な揺れだったため気づいていないものがほとんどだったが不二だけは見逃さなかった。珍しく開眼して桃城の背中を見つめる。そして口を開いて言った。
「うん、そうだろうね。もしくはもう付き合ってる人がいるとか。…たとえば桃城、とかね」
声そのものはやさしいものだったが、その言葉にはどこか震え上がるような恐ろしさがあった。それに気づいてしまった桃城は振り向くことができず、恐怖から肩を小さく揺らしながらしばらくは外を見ていた。
魔王な彼にだけは隠せない−−−−−−
桃ちゃん誕生日おめでとう。
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