猫流愛情表現の仕方

▽猫の日記念/桜乃ちゃん猫化


敏感な猫耳をこれでもかという風に思い切り撫でられた桜乃の口から出た声はあまりにも色気がなかった。うひゃ、と発せられた声に不二はクスリと笑うだけで、撫でるのを止めようとはしない。むしろ先ほどより撫で方が激しくなっているような気さえする。

「不二先輩、あの、」
「ん?どうしたの竜崎さん」

そろそろ止めてください、と言おうとしていた桜乃だが不二の無言の圧力に口を閉じてしまった。不二の笑顔はどこか黒い。有無を言わせないといったような満面の笑みに桜乃はいつも逆らえない。大人しく撫でられる覚悟を決めた桜乃は改めて不二の方を見てどうぞ、差し出すように耳を不二に向けた。そんな桜乃を見て不二はぶっと吹き出した後ぎゅうと目の前に座る可愛らしい猫娘を抱きしめた。

「不二、せんぱ、い?」
「竜崎さん可愛い…本当に可愛い」

クスクスと笑う不二はいつもとは違い無邪気な笑顔だった。どこか楽しそうにも見える笑顔に桜乃も嬉しくなって笑うと、今度は綺麗な笑顔で微笑んで、そして桜乃の頬をぺろりと舐めた。まるで本物の猫のようにぶるっと体を振るわせた桜乃の頬を不二はもう一度舐める。

「相手を舐めるのって猫の愛情表現なんだよね、確か」

そう綺麗な笑顔で尋ねられた桜乃は一瞬で顔を赤く染めた。鈍感な桜乃だが遠まわしな告白に気づいたらしい。どう答えていいものか、色々と悩む桜乃に対して不二はにこにこと余裕の笑みを浮かべている。その笑みを悔しく感じるが告白を適当に流すことなど桜乃にできるはずがない。一生懸命、百面相しながらも考える桜乃に不二は嬉しそうに言った。

「竜崎さんがこうして悩んでいる間は僕のことを考えてくれてるってことだよね」
「え?」
「それってすごい幸せなことだよね。竜崎さんの頭の中は今僕のことでいっぱいってことなんだから」

まっすぐすぎるその言葉に桜乃はたまらず不二に抱きついていた。不二は優しく抱きしめ返して、桜乃の背中をポンポンと叩いてくれた。小さい子をあやしているような状況に納得などいくはずもないけれど、しばらくはこうしていたいと思った桜乃は大人しく抱かされていることにした。
不二は静かに抱かされている桜乃の額に口付けたあと、唇と唇をそっと重ねてみた。

「最大の愛情表現だよ」

びくりと体は震えたが桜乃の嫌がる様子はない。不二は安心したように笑ったあともう一度桜乃を強く抱きしめた。


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