午前八時の素敵な誘惑
▽新婚設定
朝目覚めたとき、桜乃の隣にはいるはずのない人物が、気持ちよさそうに眠っていた。
「っ!」
声にならない悲鳴を心の中であげた桜乃はとりあえず深呼吸をして落ち着こうとしたのだが、心拍数は桜乃の限界ギリギリまで上がっていたため中々落ち着くことは出来そうになかった。昨日の出来事を思い出して状況整理をしようとしたが、昨日は確実に一人で寝た記憶があるため意味がない。そのため何故隣で跡部が寝ているのかは結局分からなかった。
桜乃はいつ跡部が入ってきたのかを不思議に思ったが、これ以上考えても無駄だと思い考えるのはやめて跡部を起こすことにした。
「け、景吾さん。起きてください朝ですよ」
「ん…もう朝か…」
優しく静かに体を揺らして声をかければ、跡部はまぶしそうに何度かまばたきをして、それから桜乃の方を見た。じっと見つめられて桜乃は「何ですか」と首を傾げると跡部は突然腕を伸ばして桜乃を布団の中に引きずり込んだ。きゃあと小さな悲鳴をあげてベッドに倒れこんだ桜乃の唇に優しくキスをしたかと思うと、今度はぎゅうと抱きしめてきた。
「景吾さん?どうしたんですか?」
「いや、桜乃の可愛い寝顔をもう少し見てーなと思って」
「…どういうことですか?」
にやりと笑って言った跡部の言葉が理解できず桜乃はきょとんとしながらそう返事をした。鈍感なのは相変わらずだな、と跡部は小さく笑ったあと桜乃の唇にもう一度キスをして告げた。
「もう少しこのままでいたいって言ってんだよ」
「こ、このまま、ですか?」
「そうだ。何だ、嫌なのか?」
跡部にそう尋ねられるが、嫌なはずがないと桜乃は首を横にふった。すると跡部は満足そうに頷き、ゆっくりと静かに瞳を閉じた。
午前八時の素敵な誘惑
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