▽捏造注意/リコ視点

無冠の五将と呼ばれる彼らと私は何故か、並んで街中を歩いている。

「鉄平、これどういうこと?」

とりあえず状況を把握したくて鉄平にそう尋ねてみたけど返ってきた答えはあまりにも頼りなくて。

「ん?ああ、…何だっけ?」
「もう!!鉄平ちゃんが日頃世話になってるリコちゃんに何かしてやりたいって言い出したんじゃないの!」

言いだしっぺらしい鉄平が天然っぷりを思い切り発揮してくれ、その代わりに実渕君が答えてくれた。どうやら鉄平なりに考えた私への恩返しを今からしようとしてくれているらしい。けど、それなら鉄平だけでも十分なはず。無冠の五将を連れてくる意味が分からない。そもそも、未だに連絡を取り合っていたということに驚きだ。

「君たち仲良かったのね。こんなふうに休日に集まるくらいですもの」

意外だったわ、と続けて言葉にすればとんでもないと言った表情を浮かべる彼ら。その中でも特に花宮君はひどい顔をしていた。「ふざけたこと言ってんじゃねえぞ」と心の声が聞こえてきそうなぐらい。なんで休日にこんな奴の顔を見なくちゃいけないのかしらと思わずため息をつけば実渕君が手を握って微笑んでくる。

「ごめんなさいね。この子素直になれないだけなのよ。本当は私たちと同じでリコちゃんに会えて嬉しいんだから!」

女の私でも羨ましいと思うほどの綺麗な笑みでそう口にする実渕君がキラキラ輝いて見える。釣られるようにして私も笑みを浮かべると実渕君は満足そうに頷き私の頭を撫でてそのまま手を握って歩き出す。するとそれを見た鉄平が、まるでそうすることが当たり前のことのように実渕君と反対の手を握ってきた。鉄平を見上げれば、いつもの笑みを浮かべて更に強く手を握られた。

(鉄平の温もり…やっぱり安心するわ)

ずっと前から知っている温もりに安心して笑みを零したとき、背中に結構な重みを感じて振り返る。

「葉山、君?」
「ずるいよー二人共!オレだってリコちゃんと手繋ぎたい!!」

人懐っこい笑みを浮かべて私の背中に抱きついてきたのは葉山小太郎君。私が驚いたのは突然抱きつかれたからではない、葉山君のあまりの人懐っこさにだ。全く関わりのない葉山君にリコちゃんなどと呼ばれるほど仲良くした覚えはない。一言も言葉を交わしてはいないはず…となると相当の人懐っこさだといえる。そんな葉山君が何だか可愛く見えてつられるように笑えば葉山君は可愛らしいとびきりの笑みを浮かべてくれた。

「リコちゃん好き!!」
「きゃっ!」

突然腕を広げて抱きつこうとする葉山君、けど。

「こら、相田を困らせるな」

根武谷君に服の襟を掴まれた為それは叶わなかった。ほっと一息つく私に根武谷君は申し訳なさそうな顔をして頭をかく。根武谷君が謝るようなことではないのに妙に律儀なところは彼の長所の一つなのかもしれない。大丈夫よ、と口にすれば根武谷君は気恥かしそうに視線を逸らしておおとつぶやく。容姿だけで怖そうと決め付けていたけれど優しい人なんだと分かって、何だか嬉しくなって頬を緩めた瞬間、実渕君が大声をあげる。

「もう小太郎も永吉も!!リコちゃんを構いたい気持ちはよく分かったから!」
「なっ!オレは別に!!」
「じゃあ構わせてよー。レオ姉ばっかりずるい!」

実渕君が言っていることが私にはよく分からなかった。どうして葉山君と根武谷君が私を構いたいなどと思うんだろう。大して絡んだこともないただのライバル校のカントクである私に。戸惑う私に気づいた鉄平は突然頭を撫でてくる。何するのよ、と言葉にする前に鉄平は口を開く。

「リコは知らないかもしれないが、アイツらリコのこと結構前から知ってるんだ」
「…そうなの?」
「ああ。…悪い奴らじゃないから嫌わないでやって欲しい」

初めて見る悲しそうでやわらかい表情に私は何も言えなかった。けど鉄平が言うように、彼らが悪い人じゃないことは十分分かっている。ほんの数十分一緒にいただけでも、彼らのいいところをたくさん知ることができた。それに何より楽しかった。
花宮君はまだ少し苦手だけど…。でも、花宮君にだっていいところの一つぐらいはある。だからそれを知ることができれば少しは彼を好きになれると思う。

「…少しずつ仲良くなれればいいわね」

実渕君と鉄平の手を強く握ってそう呟ければ皆が優しく微笑んでくれた気がした。


きらきら輝く彼らに微笑みを
(キセキの世代とも違う輝きを放つ)
(無冠の五将とと呼ばれた彼らに)
(精一杯の微笑みを)

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2013年《リコ生誕企画》
ゆのさんへ


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