▽3on3で1人が審判のミニ試合

どうしたら、こんな珍しい組み合わせが出来上がるのだろう。リコは目の前で火花を散らし合う男子高校生達を見上げながら深いため息をついた。

事の始まりは数十分前。部活で使う備品の買い出しに家を出たリコは最初に伊月と出会った。彼はなんとなく家にいると気分が塞ぎ込むから気分転換で散歩をしていたという。

「伊月君達がいつも派手にプレイしてくれてるおかげで備品の買い足しに行かなくちゃいけなくなったのよーでもこれ重くて…だから持って?」
「…はい」

そこでリコは上手く伊月を利用して荷物持ちをさせることに成功した。そしてその後伊月と同じように気分転換に街に出ていた降旗と出会い、伊月同様荷物持ちをさせることに成功したわけだが。問題はそのあとだ。
買い物を終えて帰路についたリコ達がまず初めに出会ったのは数メートル先を仲良さげに並んで歩いている笠松と高尾だ。一体どんな繋がりなのだろうとしばらく考えるリコ達だが、多方いつぞやのもんじゃ焼事件のときだろうと予想できた。二人の通う海常も秀徳も部活はオフであるために彼らはここにいるのだろうが、何故か私服ではなくユニフォームを着ている。

「練習後に落ち合ったのかしら」
「そうだろうね、きっと。それよりカントク早く帰ろう、荷物持ち流石に疲れてきたし」
「そうね、行きましょう」

伊月には彼らが練習後に落ち合ったのかどうかなどどうでもよかった。恋愛的な意味とまではいかないとしてもリコに好意を寄せている者を必要以上にリコに近づけたくなかった。今はただ笠松と高尾からリコを引き離すことだけを考えて、踵を返す。だが、運悪く振り向いた高尾に見つかり撃沈。伊月の思い虚しく、高尾の「リコさんかわいい」攻撃を食らうことになってしまったのだ。

「リコさん相変わらずかわいいっすね!!」
「高尾君も相変わらずね」

ふふと嬉しそうに微笑むリコに高尾の顔が赤くなる。伊月はその様子を見て「あーあ」とため息をつく。こうなることは予想していたはずなの伊月はいらいらを抑えられない。肩を震わせながら耐える伊月を隣に立っていた笠松が心配するがただ「ああ」と返しただけで、伊月の目はかなり殺気めいたものだ。隣にいた笠松は思わず身震いしてそれ以上伊月に関わろうとはしなかった。

「それで君たちはなんでここにいるの?」

不思議そうに首を傾げるリコに高尾は「何でもないっすよ」とへらへらと笑って答えたあと突然リコの腕を引っ張り走り始めた。突然のことですぐに反応できなかった伊月だが自分たちの大切なカントクを高尾に取られるわけにはいかないと高尾のあとを全力で追いかけた。

***

「で、なんで君たちもここにいるの?」
「リコさんに会いに来たんです、何か問題ありますか?」
「冗談を言わないの」

冗談ではないんですが、という赤司の言葉はリコには届かなかっただろう。

高尾につれられて訪れた場所はストバスのコート。そこには赤司と花宮、そして今吉という何とも言えない異様な雰囲気を醸し出すメンバーたち。一瞬近づくのを躊躇うぐらいの黒いオーラがリコには見えてしまい踵を返そうとしたのが、高尾がぐいぐいと引っ張るためどんどんと彼らとの距離が近づいていきついには彼らの目の前にたどり着いてしまったわけだ。
何故彼らが集まっているのか、それは今吉が説明してくれた。何でもPG組だけで試合をやって技能面の向上を図ろうと集まったらしい。PGではないとアドバイスできない点もあるからPG同士こうして連絡を取り合い集まったそうだが、よく花宮や赤司あたり集まったようなと伊月は思う。

(こういう集まり嫌いそうなのに)

しかしそう思ったのはリコも一緒だ。PGということ以外でなんの共通点もない彼らを目の前にリコは厄介な奴につかまってしまったと自分の今日の運の悪さを呪った。

「でも、PGだけで試合をするってのも面白そうね。うちのとこのPGもちょうどいるし、混ぜてくれないかしら?」
「あ、いいっすよ!!な!」
「カントクさんのお願いなら仕方あらへんなあ」
「ふはっ、ユニフォームもねえのにどう試合すんだよ」

花宮の発言にリコはにこりと笑って、「このままで試合するのよ」と答えた。確かに私服でも試合ができないことはないが他のメンバーよりは多少動きが劣ってしまう。だが伊月と降旗を別々のチームにいれる、ということであっさり問題は解決。そのまま伊月と降旗はPG組の交流試合に混ざることになってしまった。満面の笑みを浮かべているのはリコただ一人で、伊月と降旗は気まぐれなリコの言動に呆れていた。だが久々に見るリコの楽しそうな表情に「まあいいか」と許してしまう。リコに甘いのは木吉だけではなく誠凛のメンバー一同なのだ。

「カントク俺の動きちゃんと見ててよー!」
「分かってるわ!伊月君と降旗君のことしっかり見てるから!」

リコは可愛らしく笑って手を振る。伊月と降旗は嬉しそうに手を振り返してPG組の輪の中に戻っていったのだが、その空気のどす黒いこと。
原因はさきほどのリコの発言だろう。自分たちのことを見てるから、という発言がよほど気に食わなかったのか恨めしそうに伊月と降旗を睨みつけた。伊月もわかっているくせに「どうしたんだ?」なんて口にしたためPG組の怒りを膨れ上がらせた。

「生意気すぎ、うざっ」
「この試合、特別ルールを設けよう。一番活躍した者が相田さんとデートする権利を貰える、ということでどうだろう」
「「のった!!」」

赤司の提案に高尾と今吉がすぐに乗った。他の者も発言しないだけで思わぬ追加ルールに喜んでいることだろう。その証拠に笠松が顔を赤くして少し嬉しそうに頬を緩ませているのが見える。このむっつりが、と花宮はその様子を横で見ながらそう思ったがそういう自分も頬が緩みそうなのを必死で耐えていた。伊月と降旗はとんでもないことになったと顔を見合わせため息をつく。

「オレたちで守らないとだな」
「…ですよね、オレ頑張ります!」
「ああ、気合入れていくぞ」

そう言葉を交わして二人はリコをもう一度見た。二人の視線に気づくとリコはまた可愛らしく笑って手を振ってくる。二人はその笑顔を見て尚更頑張ろうという気持ちになった。
二人は力強く手を握り合い、誠凛のお姫様を悪党共から守りぬくことを強く心に誓い合った。


矢印の中心は俺達のお姫様

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2013年《リコ生誕企画》
真沙さんへ


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