▽中学時代/黄瀬視点

キラキラと輝く七色のオレたち。その中でも特にピンク色した桃っちは輝いて見えて、近くにいるはずなのに手を伸ばしても届きそうにはなかった。色とりどりの彼らに囲まれた桃っちは可愛らしく微笑んでいて、周りにいる彼らを笑顔にさせることのできる女の子なんて桃っちぐらいなんじゃないかって最近よく思う。普段むすっとしている緑間っちや赤司っちだって、桃っちの微笑み一つで表情は柔らかいものになる。桃っちは、オレにとってだけじゃなく、皆にとって大切な人なんだと思い知らされた。

桃っち、聞こえてるっスか。オレは桃っちが大好きで大好きで、毎日桃っちのことばかり考えてて、どうしようもないくらい桃っちしか見えてないっスよ。でも桃っちはオレだけのものじゃないから、オレだけを見てくれることなんてないし、見てくれたとしてもそれは選手としての黄瀬涼太で。それがどれほど悲しくて苦しくて、痛いかなんて桃っちは知らないんスよねきっと。…ねえ桃っち、愛してるっスよ、


「こら!きーちゃんサボリは駄目だよー」
「え、あ、桃っち…驚いたっス」
「ねえ、最近きーちゃん元気ないよ?どうしたの?」

部活をサボるようになったのは最近のこと。黒子っちたちに囲まれる桃っちを見ているのが辛くなって部活をサボリ気味になった。そんなときに見つけたお気に入りの場所が体育館裏の大きな木の下。気持ちのいい風が吹いて、ギラギラに照りつける太陽から肌を守ってくれる最高の場所。今まで誰にも邪魔されることがなかったこの場所はついに桃っちに見つかってしまった。
桃っちは怒るわけでもなく、無理やり部活に連れて行くわけでもなく、オレの隣に腰を下ろしてオレを心配する言葉をかけてくれた。オレが桃っちにとって特別な存在なのかもしれないとつい自惚れてしまう。桃っちはマネージャーとして当たり前の行動をしただけ、それなのにたまらなく嬉しかった。

「そんなことないっスよ。俺はいつもどおりっス!」
「…ばか。きーちゃんのばか!どうして頼ってくれないの?無理してるくせに!」
「桃、っち」
「私ははきーちゃんが辛い時は助けてあげたい、できる限りのことをしてあげたいの。それとも、私がそんなに頼りない…?」
「違うっス!」

違うっすよ、桃っち。頼りないわけがない。桃っちはいつもオレたちのことを考えて行動してくれてた。はっきり言えば男のオレより、きっと頼りになる存在。桃っちがいなければ帝光バスケ部はここまでこれなかったと思うし、あの和やかな雰囲気だって存在しなかったかもしれない。それぐらい桃っちは大切で、皆に愛されてて。だからオレごときが桃っちを独占したいなんて馬鹿なことで悩まなければ良かったんスよ。ただそれだけっス。桃っちがオレを助けてあげたいって、できる限りのことをしてあげたいって、そう思ってくれるだけでオレは十分幸せで。だから、もうこれ以上オレに構わないでほしい。これ以上優しくされたら、きっとオレは、桃っちを攫いたくなる。

「…これ以上構われたら、オレだけの桃っちにしたくなるっス」
「きー、ちゃん?」
「だから、もうこれ以上オレに構わないでほしいっス」
「やだっ、やだよきーちゃん!」
「…すまねえっス桃っち」


悪いのはオレ。桃っちを好きになったオレ。七色に輝くオレたちが、その中のたった一色のピンクを求めてしまったのが悪い。キラキラと仲良く輝いていたオレたちはいつの間にかバラバラになって。いつの間にか一緒に輝くことはなくなってしまった。桃っちは一人悲しんで、そして最後に選んだのは。

何故かオレだった。何でなんすか、と情けなくも涙を流しながら尋ねれば「きーちゃんが好きだから、それだけだよ」と桃っちもまた同じように涙を流してそう口にした。
桃っちは黒子っちたちに告白されて、そこで初めて本当の自分の気持ちに気づいたと言った。今までオレたち全員に平等な気持ちでいたと思っていたけれどそれは間違いで、オレのことをいつもどこかで考えていてくれたと。オレの笑顔を見れたときが一番幸せだったよってオレの大好きな笑顔で桃っちは言った。そして最後に桃っちは最高の言葉をオレにくれた。

「きーちゃん愛してるよ」
「っ!オレもっス!桃っちの何億倍も愛してるっスよ!」

キラキラと輝くカラフルな黄色と桃色が綺麗に交わった瞬間。


ピンク色したきみが好きです

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non sugar:のあさんへ。
移転お疲れ様でした。これからも宜しくお願いします。


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