夏と言えば、海。海と言えば水着の女の子や!といやらしい顔をしながらそう言ったのは志摩廉造。この男が女好きというのは今に始まったことではないため、とくに驚きも反応もしない勝呂と子猫丸。そんな二人にひどいやん二人揃って!と泣き真似をしてみるが反応はない。志摩は拗ねてしえみに抱き着き「坊たちがいじめる」と訴えればしえみは笑って志摩の頭を撫でた。

「杜山さんは優しいなぁ…坊達とはちゃうわ」
「もう一度言うてみい志摩!」
「ちょ、坊落ち着いて下さい!」

ボソッと呟いた志摩の言葉に勝呂のこめかみがピクピクと動く。思わず椅子から立ち上がり、怒鳴り声をあげる勝呂を子猫丸が宥めた。何とか怒りを鎮めて席に着くがあることに気づき再び立ち上がる。志摩がまだしえみを抱きしめているのだ。

「いつまでそうしてるつもりや…志摩」
「いやあ、杜山さんの体やわらかくて抱き心地がい…ちょ坊くるしっ!」

へらへら笑いながらそう言う志摩の首を勝呂は締め上げ、いつも志摩が座っている席まで引っ張っていく。志摩が名残惜しそうに「杜山さん」と呟くとしえみはふにゃりと笑って「仲いいね」と言った。思い切り首をしめあげられている志摩としめあげている勝呂をどう見たら仲良く見えるのか、志摩はしえみの天然さにため息をついた。そしてすぐ前に座る勝呂に小さな声で話しかける。

「うらやましいなら坊も抱きつけばええやないですか」
「ちゃうわアホ!自分と一緒にするんやない」
「そうならええですけど。坊が興味ない言うなら俺が杜山さんもらってもえええすか?」

にっこり笑ってそう言う志摩の言葉の意味が勝呂には分からなかった。しえみが好き嫌いは志摩の勝手で、自分には関係ない。けれど勝呂の胸がさきほどからざわついていた。しえみが志摩と付き合う、そう思うとじっとしていられない。そのとき自分の気持ちに気づいたのだ。

「志摩…今やっとわかったわ。俺も、杜山さんが好きや」
「…手加減はなしですよ、坊?」

にっこり笑い合った二人の横で子猫丸も嬉しそうに笑った。


愛の奪い合い
(志摩はむっつりやから気を付けた方がええよ、杜山さん)
(ちょっ!そんなやり方卑怯やないですか?!)


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