▽燐視点
雪男が女にモテるのは前から知っていたけど、しえみまであいつにとられるのは絶対に嫌だ。しえみは俺にとって特別な女子で、他の女子は雪男に譲ってもいいけど、しえみだけは絶対に渡したくない。俺はしえみが好きだ。だから、雪男には負けない。
「わあすごい雪ちゃんっ!」
「そんな大したことじゃありませんよ。しえみさんだってコツさえつかめばできます」
雪男の手元を嬉しそうに見て、雪男を褒めるしえみ。何か気に食わない。俺だってそれぐらい出来る。けど、しえみは俺に気づいていなくて、雪男を頬を染めながら見つめている。恋する乙女のような瞳で雪男を見ている。嫌だ、俺以外を見て欲しくない。ガキみたいなこと言ってることは分かってる、けど、嫌なもんは嫌だ。
「雪男、俺と勝負しろ!」
気づけばそんなことを口走っていた。いやいや、俺何言ってんだ。何の勝負するつもりだよ、俺。勢いで口走ったけど俺がこいつに勝てることって何かあるか?女子人気も頭のよさも明らかにあいつの方が上だし。料理、くらいか。俺が勝てることは。
いや、まだある。しえみへの思いの強さなら負けねえ。
「何の勝負ですか、兄さん」
「しえみへの気持ちだ!」
「…えっ、え?燐?」
あれ、俺今結構恥ずかしいこと、言ったよな?やばい、今になって恥ずかしくなってきた。穴があったら入りたいって、こういうことだよな。無理だ、しえみを直視できない。恥ずかしい。うわ、雪男が嫌な笑顔を浮かべてる。絶対からかわれる。
「しえみさん、良かったですね」
「…はい!燐、ありがとう。嬉しい」
そう言った雪男としえみは笑顔で俺を見た。…なんだこれ、俺ハメられた?あああもう最悪だ。雪男もしえみもその笑顔で俺を見んじゃねえ!
「ああもう最悪だ!」
罠にはまりました
BACK | ▽ | NEXT