しえみ、ボクは君を愛してもいいですか。殺したいほど、君が愛しい。この感情は、君にとっては迷惑ですか。ボクはこんなに君のことを愛しているのに。

以前しえみに言われた。「恋しちゃいけない人なんて存在しないよ」その言葉はどんな言葉よりもボクの胸に響いた。けどそのときはボクにとってはそんなことどうでもよかった。恋とか愛とかくだらない。そんなものこの世になくたって困りはしない。だから、正直今自分の中にあるこの愛しいという感情がたまらく恐ろしい。いつかこの感情に支配されてしまうんじゃないかと。だから、だからそうなる前にしえみを消さないと。消す、なんて簡単なことだから。

***

「こんにちは、しえみ」
「アマイモンさん!こんにちは。…あ、そういえば昨日咲いたんですよこの花!」

無邪気に笑うしえみを見たら、殺すつもりだったボクの右手は震えていた。動かない、動かない動かない動かない。駄目だ、殺しちゃだめだ。そんな声が聞こえてくる。変な感情に支配される前にしえみを消さないといけない。動け、動け動け動け。

何で動かない?今度は殺すことに怯えているボクがいる。ああ、もう支配されているのかもしれない。この愛しいという、脆い一時の感情に。ならば、いつか壊れるそのときまでこの感情に支配されてみるのも面白いかもしれない。

「ああ、綺麗に咲きましたね」
「はい!アマイモンさんに1番に見てもらえてうれしい」

無邪気に笑う君をもう少しの間、見ていたいと思った。それは風が気持ちいいある晴れた日のことだった。


先の分からない未来へ
(君となら楽しいかもしれません)


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