「あぢー…死ぬ。まじで死ぬ」
「燐大丈夫?顔、真っ赤だよ」
まだ7月だというのに、ここ数日の猛暑に燐はバテていた。体力には自信があると言っていた燐だが、この暑さには勝てなかったらしくいつもの元気はない。しえみが横で心配して声をかけるが、燐はしえみの前だから…と無理をしていた。少しでも、しえみにはかっこよく見られていたい、という燐の意地。でもこの暑さには勝てないわけで、うーあーとだらしない声を出していると燐の視界に自動販売機が入ってきた。天の救いだ、と言わんばかりに燐は自動販売機の下へと走っていく。
「うああもうやべぇ…喉カラカラ。何買うかなー」
「ふふっ。燐良かったね。これで、少しは元気出る?」
「おー。心配してくれてありがとな」
「ううん。燐は私にとって大事な人だから、心配するのは当たり前だもん!」
そう言って彼女はふにゃりといつもの可愛い笑顔を燐に向けた。その瞬間赤くなる燐の顔。決して日差しのせいだけではないだろう。しえみの言動一つ一つに燐はドキドキと胸が高鳴った。赤くなった顔を隠すように燐は、自動販売機の方に顔を向け無意識にボタンを押してしまった。
「あ、あー!」
「きゃっ…り、燐?どうしたの?」
「…買うの間違えた」
「え、あ、それはどうしようもできないね…何が欲しかったの?」
首を傾げるしえみも可愛いななんて思いつつも、燐は本当に欲しかったものを指差す。それは「良い子の成長をサポート!すくすく育つ牛乳!」というキャッチフレーズの牛乳。思わずしえみは笑ってしまった。しかし燐はかなりまじめな顔だ。必死に笑いをおさえ、しえみは燐が買ってしまった「イチゴ牛乳」を見た。
「イチゴ牛乳もおいしいと思うなぁ。飲んでみれば、好きになるよ燐!」
「んー…そういうもんか?」
「うん、そういうものだよ!」
しえみがにっこり笑って頷くものだから、燐は思い切って飲んでみた。だが、それは想像通り甘ったるく、くどい。燐は思わず、吐き出しそうになる。けれどしえみの前で吐くなんてできるはずもなく、そのまま飲み込んだ。そして無理やり作った笑顔を向けて「う、うめーなコレ!」と言った。
「うんうん!私も好きだよイチゴ牛乳!」
「けど俺には少し多いんだよなー…」
「あ、あのね燐、」
「ん?どした」
「一口、ちょうだい?」
「…!」
(ちょ、ちょっと待て!こ、これってか、間接、キ、キキキキスってやつ、じゃ…!)
一人興奮する燐に対してしえみはいつもどおりだった。しえみは別に深い意味で言ったわけではなかったらしく、にこにこ笑っていた。燐は思わずにやけてしまった頬を手で軽く隠し、ぶっきらぼうにイチゴ牛乳をしえみの口元に寄せた。しえみはゆっくりとストローに唇をつけ、飲んだ。
「……っ」
直接キスしたわけではないのに、何だか恥ずかしくて燐は一人顔を赤くした。しえみは少し飲んだら、すぐに唇を離した。
「やっぱりおいしいね、イチゴ牛乳。燐、ありがとう」
「あ、う、た、大したことじゃねーって」
「でも、ありがとう。やっぱり燐は優しいね。私優しい燐大好きだよ!」
「…お、おう、っ」
嬉し恥ずかし間接キス
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