▽燐視点


しえみはかわいらしく微笑んで、俺の手を握った。その手は想像してた通り小さくて、女の子だなあなんて当たり前のことを思った。俺は素直でやさしいしえみが好きだ。

一つ気に食わないことがあるとしたら、それは、誰にでも笑顔を振りまくこと。相手が男だろうと女だろうと天使の微笑みのような笑顔を浮かべる。だから、勝呂も志摩もしえみのことを好きになった。最初はそんな事どうでもよかったけど、今となっては後悔している。しえみの可愛さは俺だけが分かっていれば十分だった。俺だけが分かっていれば。笑顔を向けるのも俺だけで良かった。俺だけの、しえみでいてほしかった。けどそんなこと言えるわけがねえ。黙って、しえみを見つめてみる。しえみは俺の視線に気づいたらしく、スッと顔を上げた。

「燐、どうしたの?」
「あー…いや、なんでもねぇ」
「ふふっ。変な燐ー」
「変、か。確かにそうかもな」

またしえみはそうやって俺の心を揺さぶる。…そんな可愛い笑顔…不意打ちとか卑怯だろうが。狙ってやったわけじゃないから、もっとタチが悪い。けど、俺はそんなしえみがどうしようもなく好きで、好きで好きで好きで。

「好きだ」
「わ、たしが…?」
「しえみ以外誰がいるんだよ?」
「…っ」


思いはもう、止まらない


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