▽香穂子視点


真夏のくそ暑い密室の中を扇風機1つで過ごすとしたらどれほど人間は耐えられるのか。とたまたまつけたチャンネルの番組の司会者が言った。チャレンジするらしい芸人はにやにや笑っている。もし熱中症にでもなったらどうするつもりなんだろう。ふざけながらチャレンジするようなことじゃないのに、そんなことを私は番組を見ながらずっと心配していた。

そして、それから数日経った今日。何故か私はあの番組と全く同じ状況になっていた。その決定的原因は数時間前に起きた出来事だ。私と土浦君は放課後教室に残って勉強しているところを担任に見つかり、都合よく雑用を押し付けられた。しかもその雑用が簡単に終わる内容じゃなくて、普通科に通う全員分の文書類を綴じろというのだ。2人でやれなんて、無茶振りにもほどがある。一体何時間かかると思っているんだろう、そう怒っていた私だけど土浦君が笑って

「香穂と一緒なら頑張れそうな気がするな」

なんてはにかんで言うから、私も頑張ろうって気になった。でもやっぱり全員分なんて無茶な話で、気づけば窓から射し込んで光は無くなり闇が広がっていた。私たちが作業している個室は普段使われていない小さな部屋で窓も小さい。只でさえ暗いのに光が射し込まないとなると本当に暗い。電気をつけても暗い、それに暑い。担任が気を遣って扇風機1つ置いて行ってくれたけど、正直何の意味もないくらい暑かった。けど何も当たらないよりはマシだから、と土浦君と二人で使った。そしてそんな暑さにも耐えながら、全ての仕事が終わって帰ろうとしたときには鍵が閉まっていて帰れなくなってしまった。電気がついていれば気づくはずだから、多分見回り担当の教師が来たのは電気をつける前の夕方5時くらい。何で中を確認しないんだろう。と一つため息をついた。

これが私たちが置かれている状況になった原因。

「暑い…」
「だな。でもくっついている方が暑くないか?」
「だ、だってくっつかないと扇風機に当たれないし…」
「まあそうだけど」

何故か嬉しそうに笑って土浦君は言う。土浦君の言葉で熱くなった頬を冷ますように扇風機に顔を近づけてみたけど、やっぱり生ぬるい風が頬を撫でるだけ。ああもうこれじゃあ余計熱が集まるだけじゃない。冷めろ冷めろ、と手でも煽ってみるけど全く意味はない。私は落ち着こうと大きく息を吸った。

「大丈夫か?」
「う、ん。大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」

何とか笑顔でそう答え私を見て土浦君は何故か肩を抱いてきた。意味が分からず私の口からは変な声が漏れた。「どうしたの」とやっとのことで出た言葉に土浦君は答えようとせず、ただ私の肩を抱く手に力を込めた。そこから熱がどんどん広がっていく。

「つ、ちうら、くっ」
「…かわいいな。顔トマトみたいだ」

ククッと喉を鳴らす土浦君はとても意地悪な顔をしている。どうしてこんな状況でも余裕でいられるんだろう。何だか悔しかった。ドキドキしているのは私だけみたいで。だから私も何か仕返ししてあげよっかな。
私はとっさに思いついた悪戯に頬を緩めて、悪戯を決行する相手の名前を呼んだ。


クスクス、今から悪戯しますぞ

−−−−−−−−
お誕生日おめでとう土浦くん。実は土日とっても大好きです。土浦くんがタイプすぎて、香穂ちゃんとの絡みにとてもドキドキしました!末永くお幸せに!
2012.07.25


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