▽赤葦視点


彼女と初めて出会ったのは高校3年の合同合宿。烏野初参加となる合宿で俺と彼女、清水潔子は出会った。第一印象は落ち着きのある冷静な女性で、とにかくやたらと落ち着いて見えた。周りの部員が落ち着きがなかったために余計にそう見えたのかもしれないが。
変人速攻を使うコンビの片方、10番と坊主とリベロは特に騒がしかった。体育館に入った瞬間から騒ぎ出す始末。

「うおお!この匂い大会と一緒だ!!」

烏野の10番の言うとおり、大会同様体育館にはエアーサロンパスの匂いが充満していた。嬉しそうに満面の笑みを浮かべる日向。その隣では坊主とリベロが体育館の大きさに喜びはしゃいでいる。そんな様子を見て恥ずかしくなったのか主将の澤村は二人の頭を軽く叩いて興奮した様子の二人を落ち着かせていた。そんな和やかな雰囲気を纏う烏野排球部の中に一人だけ彼らと違う雰囲気を纏った人物がいた。

―それが清水潔子だった。

しかしよく観察してみると彼女の目はまるで息子を優しく見守る母親のように優しかった。小学生のように騒ぐ部員を微かに笑みを浮かべながら見つめる彼女の表情が何故か俺の目に焼きついて離れなくなった。

それから合宿中は休憩の度に彼女の姿を探した。ドリンクを部員に渡しているところだったり、部員の使用済みのタオルを洗濯に行くところだったり、もう一人のマネージャーと談笑しているところだったり。彼女の様々な表情や一面を発見するたびにトクンと心臓が音を立てる。その心臓の音の正体に何となく気づいていながらも俺は知らないフリをした。

そして、知らないフリをしたまま合宿最終日を迎えた。このまま彼女と何の進展もなく合宿が終わると思っていた俺に合宿中一番の驚きの出来事が起きた。
彼女に突然話しかけられた。初めて言葉を交わす俺と清水さん。

「梟谷の皆さんの分のドリンク、マネージャーさん達が別の用事で抜けているから代わりに持ってきたんだけど…どこに置けば…?」

彼女の腕いっぱいに俺達部員のドリンク。慌てて彼女からそれを受け取ろうとすると彼女は「待って」と口にして首を横に振る。

「いきなり全部受け取るのは無理がある…それに私なら大丈夫だから」

そう言うと彼女は梟谷の部員の荷物がまとめて置いてある場所にドリンクを静かにおろした。わざわざありがとうございます、と礼を言う俺に彼女は小さく微笑み「どういたしまして」と言葉を返してくれた。マネージャーと話をしていたとき見せた柔らかい笑みを全く同じ笑みを俺に見せる彼女。また心臓がトクンと音を立てた。
もう、知らないフリなんてできないほどに俺の気持ちは彼女に向いていることに気づかされてしまった。トクントクンと音はどんどん早くなっていく。彼女の笑みが俺の心をかき乱す。

(これはもう…重症だな)

気づいたときにはもう遅すぎた。恋の病は侵攻しすぎたようで、元に戻すことはできそうにないようだ。


恋の病が侵攻中

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かなちんへ。
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赤潔さんでした〜赤葦君が片思いしているお話です。書いてて楽しかったです。リクエストありがとうございました!




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