▽澤村視点/参加高校捏造


合同合宿という名の地獄が始まった。練習内容が今まで以上に厳しいものになるという意味でも地獄だが、俺が地獄だと思うのには他にも理由がある。それは、清水だ。以前から清水の容姿は他校でも噂になるほどで、何度か校門で待ち伏せされていたときもあった。そのときは俺と菅原と旭で鉄壁の守りを見せたが、そう毎日俺らが守ってやれるわけではないため、何度か絡まれて嫌な思いをしたと清水は言っていた。それほど圧倒的な人気を誇る清水は、大会に参加するたび、練習試合を組むたびにどんどんファンを増やしていき、結果今回の合同合宿にも清水を狙う輩が紛れ込んでしまったわけだ。それが一番の問題で、俺にとっては地獄。好きな女がほかの男から狙われている…いい気分はしない。

「今回の合宿…無事に終わるといいんだが」

そんな俺の切実な願いは合宿1日目にして叶わぬものとなった。

***

1日目の練習終了後、清水のもとに何人かの他校生が集まった。青城の及川、梟谷の木葉、音駒の山本、伊達工の二口。主に喋りかけているのは及川と二口だが周りにいる奴らは清水がどんな言葉を発するのだろうとそわそわしている。苛立つ。清水は烏野のマネージャーだというのに。清水の隣は、そこは俺の場所だというのに。

(クソ…ッ。今からこんなに余裕がなくてどうするんだ)

ちょっと他の奴らと清水が話したくらいでこんなにイライラするなんて思いもしなかった。まだ合宿は始まったばかりだというのにこの苛立ちようは異常だ。無事に合宿を終える自信がなくなってきた。ここにきて初めて清水に対しての思いの強さを俺は知ってしまった。
遠くから聞こえる楽しそうに清水に声をかける及川達。清水は、ふーんとかそうとか、そっけな返事ばかりだけど心なしか楽しそうに及川達の話を聞いているような気がする。いつもより高い声のトーン。清水が反応を示すような話題になったのだろう。わいわいと盛り上がりつつある清水達。いつの間にか輪になっていて仲良く皆で雑談を始めた。

「俺は、あそこのメーカーだとわさび味のポテトチップがおいしいと思うんだけど?」
「うん…分かる。わさび味が一番おいしい」

何となくスナック菓子の話をしているのは分かった。この手の話なら清水は喜んで飛びつく。無類のお菓子好きであるから。前もって清水が関心を持っているものなどを調べてきたんだろう。一度ガン無視された及川なら考えられる。用意周到だ、流石だ。
だが、そんなこと言っている場合ではない。清水の隣をこのまま奪われたままでいたくない。その場所だけは。俺が唯一他の男より清水と近い位置にいると思える場所だから。誰よりも近い場所で清水の笑顔が見れる。ほんの少しの表情の違いも分かる。

清水の隣にいるのは、一番近い場所にいるのは俺でありたい。気づけばとっさに清水を呼んでいた。

「清水、悪いんだけどこっち来てもらってもいいか?」
「あ、うん、どうしたの」

特に用事があるわけではない。ただあの輪から清水を離れさせたかった。周りにも聞こえるように大きめの声で清水を呼ぶ。及川達が一瞬不愉快そうな表情を浮かべたのが見えた。その表情に少しだけ嬉しくなる俺はかなり単純にできているのだと自分で呆れてながらも、軽い優越感に浸る。少しずつ俺の方に近づいてくる清水に小さく微笑み、俺も自分から清水に近づいていく。そして、細くて柔らかい腕を掴んだあと一気に走り出した。

「えっ?!」
「清水、いいから走れ!」
「う、うん?」

驚く清水、まあ当たり前の反応だろう。周りも清水と同時に大声をあげる。どこに連れて行く、という先ほど清水を取り囲んでいた奴らの質問も聞こえないふり。ゆっくりと二人で話ができる場所へ。俺達は体育館を飛び出した。奴らとどんどん距離が離れていく。横を見れば何が起こっているのか分からないという風な清水。けれどちゃんとついて来てくれるのが清水らしい。…さて、どこへ行くか。

二人きりで、清水の隣で。清水の声が聞けて、笑顔が見れる場所。

―俺達二人だけの秘密の場所を探しに行こう。


君の隣は俺でありたい

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鈴蘭ちゃんへ。
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ハイキューNLの原点・大潔ちゃんでした。やっぱり主将とマネ好きです〜。RTありがとうございました!




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