▽お付き合い後/月島視点


前々から小さいとは思ってたけど、いざ谷地さんを目の前にするとその小ささに改めて驚いてしまう。見下ろせば見えるのは谷地さんのつむじ。僕の高さからだとちょうど見えるのがそれだった。他人のつむじをまじまじと見る機会などないし、見ようとも思わないがちょうど目の前にあるのだから見てしまうのが普通だ。じっと見つめているとやっと僕の視線に気づいた谷地さんが素早い動きで自分のつむじを僕の視線から守った。

「…なに?そんなに焦ることないでしょ」
「だ、だって月島君の視線がくすぐったくて…恥ずかしいといいますか…」

そんなに長々見たつもりではないが、谷地さん的には結構な時間に感じたらしく頬を赤くしている。そんな谷地さんの表情があまりにも可愛くて耐え切れなくなった僕はすぐに視線を外した。が少し経ってからチラリと盗み見るとそこにはまだ顔を赤くして僕の方をじっと見る谷地さんがいた。思いっきり目が合ってしまい何故だか恥ずかしくなる。急いで僕がまた視線を外そうとすると両頬をがっちりと谷地さんの両手に挟まれてそのまま谷地さんの方を向かせられ谷地さんと僕との睨めっこが始まる。

「谷地さん、痛いんだけど」
「月島君すぐにどっか向いちゃうんだもん…しっかり顔を見て話してください」

むすっと頬を膨らませる様子は駄々をこねる小さな子供のようで。つい吹き出してしまった僕に谷地さんは更に拗ねてしまったようだ。ぶすっとした表情のまま僕に背を向けて歩きだしたのだ。待ってよ、という僕の声も完全に無視して谷地さんは体育館を出ようと扉に手をかけた。
僕は谷地さんの後ろに立ち扉を開けようとしていた谷地さんの手を握り少し前かがみになり耳元でそっと囁いてみた。

「このままお別れするの寂しくない?」

つまりはキスしようとお誘いをしているわけだが谷地さんが意味に気づくのかは分からない。鈍感な谷地さんのことだろうから多分、…否絶対分かってないだろう。それでこそ谷地さんって感じだけど。振り返り上目遣いで僕を見る谷地さんは予想通り首を傾げてどういう意味だろうと言った表情。
ああ、やっぱり。いや、わかっていたじゃないか自分。谷地さんは鈍感だから僕の言ったことを理解していないだろうと。分かってはいたが、少し寂しいのが本音なわけで。

「谷地さん、本当にわからないの」

ダメ押しでもう一言追加してみるが谷地さんは更に首を傾げるだけだ。流石というかなんというか、谷地さんは本当に分からないみたいで僕はあまりの鈍感さに呆れてしまう。だけどそんな谷地さんが僕は好きなわけで。惚れた弱みというものなのか、どんな谷地さんでも許してしまう。
僕は僕を見上げる谷地さんに顔を思い切り近づけてキスする振りをした。唇と唇が触れるか触れないかギリギリのところでストップする。谷地さんは目を大きく見開いて小さく「え」とだけ声を出す。

「意味、分かったでしょ。谷地さんからしてくれる?」

鈍感すぎる谷地さんにほんの小さなお仕置き。きっと拒否するだろうけど、最終的にはきっとさせてみせる。耳まで真っ赤にして震えながら僕にキスをする谷地さんを想像して一人僕は楽しくなり自然と口角が上がった。


さあ早く、僕の唇が待っている

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鈍感谷地ちゃんは絶対かわいい。つきやち尊すぎて辛いです。つきやち増えれば世界(私の)は幸せで包まれる。




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