▽結婚後/及川視点


俺と彼女が結婚してからしばらく経って俺たちはやっと落ち着いて暮らせるようになった。

彼女との結婚が決まった時、想像していたとおり周りからはたくさんの野次と反対の声が多かった。半数は彼女に恋焦がれていた男達の嫉妬から生まれた野次だ。彼女は俺が出会ったときには既にたくさんの同年代の男子を魅了していたから、更に綺麗になった今周りが羨ましがるのは仕方ない。
そして俺もまた彼女と同じように女子にそこそこ人気だったわけだから、残念がる女の子達がたくさんいた。けれど彼女達は俺の幸せが私達の幸せです、と笑ってお祝いの言葉をくれたのだ。性格のいい素敵な女の子達に好かれて、俺は幸せ者だなと感じた。

「徹、顔ニヤけてる。気持ち悪い」
「ええっ!潔子ちゃん愛する旦那様にそういうこと言っちゃう?!」
「うるさい」

潔子ちゃんを目の前にして俺はふと昔のことを思いだし、少しの間思い出に浸っていたわけだが思いのほか表情に出てしまっていたらしくバッサリとそう言われてしまった。クールなところは相変わらずで、俺に対する態度は結婚前とまるで変わっていない。まあそれが潔子ちゃんらしいなって思うし、嫌いじゃない。あ、別に冷たくされるのが好きってわけではない。高校生の頃と変わらない潔子ちゃんを見てると安心するからだ。潔子ちゃんは潔子ちゃんのままで俺の傍に居て欲しい。変わらない彼女でいて欲しいと。

「でも潔子ちゃんのそんなところが好きなんだよね、俺」
「ばか…」

俺の言葉にそう口にした潔子ちゃんは無表情のままそっぽ向いてしまう。けれどよく見れば潔子ちゃんの髪の間から見える耳が赤くなっているのが見えた。照れている証拠だ。今までは気づくことができなかった潔子ちゃんの照れ隠し。潔子ちゃんは恥ずかしくなったとき、照れて赤くなった顔を見られまいとそっぽ向く癖がある。けれど真っ赤な耳は丸見えで。ああ、今すごく恥ずかしいんだなと俺にはすぐ分かってしまう。それが何だかたまらなく嬉しかったりする。

「ね、潔子ちゃん」
「…なに?」
「今すごく潔子ちゃんにキスしたくてたまらないんだけどしていい?」

ちょっとからかいの意味もこめて。まあしたいっていうのは本当だけど。でもきっと潔子ちゃんはいつものように顔を真っ赤にして怒って「駄目」とか言ってキスすることを許してくれないんだろうなと思う。潔子ちゃんはびっくりするほど純粋で恥ずかしがり屋さんだから。すごくすごく可愛い女の子だから。
…だからこそ、びっくりした。潔子ちゃんからキスしてくれるだなんて。唇に感じた確かな感触は潔子ちゃんの唇で。柔らかくてほんのりと感じる甘い匂い。いつも潔子ちゃんがつけているリップクリームの匂いだ。ふにゅりと柔らかい潔子ちゃんの唇の感触が未だに残っている自分の唇をなぞるように触ってみる。潔子ちゃんはその俺の動作で自分のしたことの大胆さに初めて気づいたのか今更頬を染めている。潔子ちゃん、なにそれ。可愛すぎるよ。

「潔子ちゃんからのキス嬉しいよありがとう。お礼はキスの続きでいいよね?」
「つづ、き?徹何言って、る」
「抵抗してもだーめ。もう俺が我慢できないの。潔子ちゃんは何もしなくていいから、ね?」

いつもの潔子ちゃんならここでビンタの一発くらい食らわせてくるけど、今日はただ素直に頷くだけ。どうして今日こんなに素直なんだろうと不思議に思って考えてみれば今日は俺の誕生日。ああ、それで。
今日の頑張りを思い返すと本当に愛おしく感じる。だからこのあとは俺が可愛がり倒してあげようと思う。俺の愛をたくさん、感じさせてあげるから。覚悟しててね、俺のかわいいお嫁さん。


俺はここに恒久の愛を宣言する
title by レイラの初恋

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お誕生日おめでとう及川さん。たまには両思い及潔さんも書きたいな〜と思い結婚ネタで書かせて頂きました。結婚してもクールな潔子さんだけど、そんな彼女の照れ隠しに気づいたりできるようになって嬉しい及川さんとかいいなあって思いながら書いてました。及潔に幸あれ。




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