▽灰羽視点


最近よく俺の視界に入ってくる一人の女の子がいる。名前は谷地仁花。翔陽の学校のマネージャーの一人だ。落としてしまうんじゃないかというぐらい両手いっぱいに荷物(顔半分荷物で埋もれるぐらい)を抱えてちょこちょこ動き回る彼女はすごいタフだなと思う。選手のために役に立ちたいという彼女の気持ちがビシバシ伝わってきて、自分達の学校のマネでもないのになんだか嬉しくなった。そんな彼女と話す機会がある日突然やってきた。
今日の夜少しだけ一緒に練習しようと言っていた翔陽が食べすぎでお腹を下したらしく、その連絡をしにわざわざ夜の体育館に彼女は足を運んでくれたらしい。

「それで翔陽は大丈夫?今日はもう無理っぽい?」
「あ、その、多分無理かな、って、」
「そっか…あー!残念!!」
「ひっす、すいません!!約束守れなくてすいません!」

俺が一つ伸びをして少し大きめの声でそう口にすると何故か彼女は小さな体をこれでもかというぐらい揺らして驚く。そして何度も俺に頭を下げて「すいません」の嵐。彼女が謝ることじゃないのに、どうして。謝らなくていいよ、と口にしても彼女は「すいません」以外の言葉を口にしてくれない。どうやら彼女は俺の背の高さに完全にビビっているらしかった。確かに今回の合宿には背の高くていかつい男がごろごろいるし彼女のように背の小さい小柄な女の子からしたら怖いのかもしれない。
ガタガタと震える涙目の彼女は何だか小動物のようで可愛く見える。きっと俺のと彼女の体格差なら抱き心地いいんだろうなとふと思い無性に抱きしめたくなる。

「んーっと、仁花ちゃんだっけ?日本人って小柄って聞くけど、仁花ちゃんは格別だね!」
「え、す、すいま」
「抱きしめてみてもいい?仁花ちゃんってすごく抱き心地良さそうだなって思って!」

俺の言葉に再び「すいません」を口にしようとした仁花ちゃんの言葉を遮り俺はそう聞いてみた。仁花ちゃんは今日一番と言ってもいいほど困った表情を浮かべてあたふたし始める。口をぱくぱくと開閉し何か言いたげにしているけれど言葉が見つからないのか、声になっていない。その様子が今度は金魚のように見えてきて俺は再びふきだす。ころころ表情が変わって面白い女の子だ。一緒にいて飽きない…翔陽はこんな子がいつもそばにいるのか。羨ましい!きっと毎日楽しくてたまらないはずだ。どんなにきつい練習が待っていても翔陽はそれを笑顔で楽しいと感じることができる。練習のあとにも彼女と話ができるという楽しみが待っている。楽しいことだらけだ。
初めてマネージャーというものが欲しくなった。いや、違う。谷地仁花という人物が欲しいんだ。傍にいることができないのが本当に悔しい。翔陽がすごく羨ましい。

(だから、せめてこれぐらいは許してよ翔陽)

彼女の細い肩を引き寄せて腕の中に閉じ込める。彼女の顔はちょうど俺の胸のあたりに当たった。本当に小さい…サイズ感がかわいい。本当に同じ年齢なのかと疑ってしまうくらい。さらさらとした綺麗な髪を指に絡ませるとふわりとシャンプーのいい香りがした。ああ、女の子の匂いだ。なんて少し変態っぽいかな俺。真っ赤になって慌てふためく彼女を落ち着かせるように頭を撫でると俺を見上げて小さく微笑まれた。不意打ちは卑怯だよ。

「何だかお兄ちゃんができたみたいです」

笑ってそう口にする彼女だけど俺は少なからずショックを受けた。ハグまでしたのにお兄ちゃんみたいだって、異性として見られていない俺って…。ああもうこれは本気になっちゃいそうだ。彼女に俺も一人の男なんだよって気づかせたい。
「俺の本気見せてあげる。だから、覚悟してて」そう口にした俺に、仁花ちゃんは頭にクエスチョンマークを浮かべていた。その表情がまた言い表せないほどに可愛くて、俺は仁花ちゃんの額に一つ口づけを落とした。


きらきら輝く世界のはじまり
title by レイラの初恋

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リエーフとやっちゃんの恋の始まりでした。リエやち前々から気になっていたのでやっと書けた〜って感じです。やっちゃんの身長だと180cm以上はもう巨人だよね。ほんとやっちゃんかわいすぎか。




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