▽月島視点


僕の視界に突然キラキラと輝く存在が入り込んできた。

ふにゃりと緩んだ頬をピンク色に染めて嬉しそうに清水さんに話しかける谷地さん。最近何故か僕の視界には彼女がよく映りこんでいる。僕が彼女を視界に入れているのか、それとも彼女が僕の視界に入ってくるのか。それはよく分からないけど。
じっと見つめているつもりは無かったのだが山口が声をかけるまでの数分間僕の視線は谷地さんの方を向いていたらしい。自分でも気づかなかった。

「ツッキーは、谷地さんが好きなんだね」
「は?」
「いや、だってツッキーずっと谷地さんのこと見てたし。時々口元緩んでたよ?」

山口が何を言っているのか分からなかった。僕が谷地さんを好き?
そんなことあるはずがない。いや、あってたまるものかと僕はそれを必死に否定したが山口はにまにまと楽しそうな、見ていて腹が立つような満面の笑みを浮かべてくる。終いには僕の肩にポンと手を乗せたと思えば、今度はサムズアップした反対の手を僕の目の前に出して「頑張れよ」と口にした。

「いや、だから意味が分からないんだけど?」
「隠さなくていいってツッキー!俺誰にも言わないから!」

そういう問題じゃない。僕が谷地さんを好きだとかそんなことありえない。たまたま視界に入ってきた谷地さんが何となく気になって見ていただけで。…どうして気になったんだ?数分間も見てしまうほど谷地さんのことが気になっている…?この僕が、どうして。

「ツッキー今やっと自覚したでしょ」
「違う」
「本当に素直じゃないよね」

山口は何故か嬉しそうにそう口にして。僕の背中を突然押してきた。

「まずは挨拶から!仲良くなる基本!」
「だから、ちが、」
「いいからいいから!」

こんな強引な山口は見たことがない。僕の背中をぐいぐい押してくる。
結局最終的に谷地さんのかなり近くまできてしまった。清水さんとの会話は終わったのか今は谷地さん一人。僕の存在に気づいた谷地さんが不思議そうに僕を見つめて「どうしたの?」と首をかしげた。不覚にも可愛いと思ってしまった自分が憎い。何でもないと踵を返そうとすると、山口が僕の腕を掴み再び谷地さんの方に視線を向かそうしてきた。逃げちゃ駄目だよツッキー、にっと笑いながら山口はそう言ってくる。

「……」
「月島君?」
「(ああもうどうにでもなれ)」

未だに笑顔で僕を見る山口を横目に、谷地さんに朝の挨拶をする。初めて僕から挨拶をしたから谷地さんはとても驚いた表情をしていたがすぐにさっきの清水さんに向けた笑顔に似たような柔らかい笑みを浮かべてくれた。

「おはよう月島君!」
(あ、谷地さんやっぱりキラキラして見える)

僕の視界に突然入り込んできた一人の女の子。谷地仁花。どうやら僕は、彼女が僕にとって特別な存在であることに気づいてしまったようだ。


恋の女神が悪戯に微笑んだ
title by レイラの初恋

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嫉妬してしまうほどにアンケートではつきやちが人気ですね。私も谷地ちゃん受けはつきやちが本命なんですけどね。




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