ずっと言いたかった言葉は、心の奥底にしまっておいた。あいつにはワカちゃんという存在が一番大事だから。きっとこの先何があっても、ワカちゃん以上の存在の子は現れないと思う。それくらい大事な存在だから。
でも、あかねさんが引っ越してきてからその考えは揺らぎ始めた。もしかしたら、あかねさんのことをワカちゃん以上に好きになってしまうかも、と。

「ねえ、あかねさんのこと好き?」
「何だよ突然」

こんなこと聞いても全く意味ないのは分かっているけど、つい聞いてしまった。ワカちゃんの為に聞く、と自分に言い聞かせるけど、本当のことを言うと自分自身が知りたいだけ。そんな自分がおかしくて笑ってしまう。あいつは不思議そうに首を傾げて言った。

「別に嫌いじゃないけど、好きでもない」
「…ふーん、普通ってことか」

自分でホッとしたのが分かる。さっきまで心臓の音がうるさかったのに今じゃもう落ち着いている。こんなにも私は目の前にいる男が好きだったのかと思うと、悔しかった。だから、私からは絶対に言わない。

「何で?」
「別に、気になったんで聞いてみただけです」
「あっそ」

私はべえと舌を出して答えて、背を向けて歩き始めた。ずっと言いたかった言葉を心にしまって。


∵ずっと言いたかった言葉
(まだ必要ない)



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