好きかどうかは分からないけど、嫌いではないんだと思う。寧ろ好きに近い感じ。あいつはあかねさんのこと、好きなはずなのに。どうして、どうして赤石先輩に遠慮するのだろうと。私は気になって仕方がない。いつものように赤石先輩を笑顔で見送り、あかねさんと帰る赤石先輩を嬉しそうに見つめるあいつ。どうして、どうしてそんな笑顔ができるの?自分だって、好きなくせに。モヤモヤとしたこの気分が嫌で、私は頭をブンブンと振ってみたけどダルさは残ったままだった。

「青葉ー」
「なんですか、樹多村先輩。今日はあかねさんと帰ったらどうですか?」
「…おまえなー。俺は別に好きなわけじゃないんだよ」

そんなこと言って、目を逸らす目の前の男が憎らしかった。好きなら好き、とはっきり言ってくれればスッキリするのに。適当に答えて話を逸らそうとするから私はいつまでもダルさが残ったまま。ちゃんと、答えて欲しいと思っているのに…。

「好きなくせに馬鹿みたい」

思わず口から出てしまった言葉は、今の私の正直な気持ち。あんたは馬鹿だ、好きっていう気持ちを押さえ込んで。

「好きじゃないって言ってるだろ。俺が好きな女は…、素直じゃなくて意地っ張りで俺に野球を教えてくれた男らしい女、だよ」
「え、」

思ってなかった言葉に私は言葉に詰まった。何て返事をすればいいんだろう、どういう顔をすればいいんだろう。そんなことを考えていたら、笑われた。しかも鼻で。

「そんなに悩むなよ。別に付き合って欲しいとか言ってるわけじゃないんだし」
「…びっくりしただけだから。あんたはあかねさんのことが好きだと思ってた」
「だから違うって言ってただろ。ってことだから、帰るか」
「あ、うん。しょうがないから一緒に帰ってあげますよ」
「なんだ、その言い方」

モヤモヤした気持ちはいつのまにかどこかに行ってしまった。自分でも単純だなって思ったけど、心が晴れたから気にしないことにした。私は気持ちを伝えることがまだできそうにないけど、いつかは伝えようと思う。

「私、あんたに言いたいことがあるけどそれはまだとっとく」
「はぁ?!今、言え。今。とっとくぐらいなら今言えってんだ」
「嫌です」


∵好きなくせに馬鹿みたい
(おまっ!言え!気になんだろ!)

title by 確かに恋だった



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