「あ、また来てる」

千田がポツリと呟いて見つめている先には、青葉のいとこにあたる朝見水輝がいた。朝見の視線はまっすぐ青葉に向かっていたが、そんなのは確かめなくてもわかっていた。何故ならば、毎日来ているから。

「相当、好きらしいな。月島のことが」
「そりゃ、お前もだろ」

千田がふんと馬鹿にしたように鼻で笑い、朝見の方を見て言った。でも赤石の言葉にピシッと固まってしばらく動けなかった。千田が青葉に惚れてるのは見てればすぐ分かることで、実際惚れてるのは俺や東も同じだった。

「本当に月島はモテるな、東?」
「…何で俺に話をふる」
「いーや、なんとなく」

赤石が面白そうに笑い、東に話をふって最後には俺のほうを見てきた。何かを企んでいるようなものすごく気持ちが悪い笑顔で。何が言いたいのかぐらい分かっている。東と似たような内容のはずだ。けど、赤石が次に口にした言葉は予想もしていなかったことで。俺は驚かずにはいられなかった。

「月島って最近彼氏が出来たらしいぞ?」
「「はあああああ?!」」

俺が思っていたこととは全然違う、答え。青葉には彼氏は絶対できない。第一、あいつの好みは「160km/hの直球を投げられる男」だから。そんな簡単に青葉に彼氏にできるはずがないんだ、絶対に。…絶対に。これには俺や東だけでなく、レギュラー一同が驚愕した。こいつらも青葉にはデレデレだったし、そりゃショックだ。

「ちょっと待って、それって朝見水輝って言いたいわけ?」
「あぁ、その通りだ」

よりにもよって、あいつかよ。青葉のやつ、何考えてんだよ…野球にさえ関わっていない男と付き合うなんて。なんだ、頭の回線どっかイカれたか?

「そういうことだ、月島のことは諦めるんだな」

赤石がふうとため息をつきながら立ち上がり練習に戻る。俺達はその場に取り残された。

「だーれが諦めるか…。青葉を取り返す!」
「おう!それには俺も賛成だな。とりあえず、取り返すことから始めるか!」
「そうだな」

俺達はお互いに頷き合い、強く誓い合った。


∵嘘で動き出す恋の戦争
(これであいつら動き出すか?嘘でも言わなきゃあいつら動かねえんだから)



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