「な、何でいんの?」

家に着きリビングの扉を開けて入った薫は思わずそこにいた人物達を見てそう呟いた。お邪魔してますと声を揃えて言う人物、聖秀野球部ご一行様。いつも以上に部屋が狭く感じるし、部屋も汗くさい。薫は思い切りため息をつき、近くのいすに腰掛け何でいるのか理由を聞いた。

「本当は今日学校でミーティングがあったんだが使えなくてな」
「へー…。それはそうと何でマネージャーいないの?」

田代が短く説明してくれ薫は大体状況を把握してへえと頷く。それと同時にマネージャーがいないことに気づき尋ねると用事で来れないと短く答えた。美保が少し苦手な薫は、ホッとした表情を見せた。薫はしばらくして立ち上がり、台所に向かう。そして棚を開けた。小腹がすいたので何か軽く食べようとしたのだが何もない。冷蔵庫を開けるがたくあんや梅干など、薫が求めているようなものはなかった。

「あ、母さん達旅行行ったから姉貴が飯作って」
「また行ったの?仕方ないなー…カレーでいい?」
「何でもいい」

薫が聞くと大河は素っ気無い返事をする。しかし特に気にする様子もなく、薫は材料を取り出し料理を始めた。じゃがいもやにんじんの皮を丁寧に剥き、包丁で綺麗に切っていく。そのとき、後ろで誰かが『俺も食いたい』と言った。振り向けば吾郎と目が合った。どうやら彼が言ったらしい。

「そろそろ7時だよな?腹がすく頃だろ」
「…まあそうだね。どうせなら皆食べてく?」

吾郎に言われ薫は確かにそうだなと頷く。ならば吾郎だけではなく他の部員も食べていくのが普通だろうと思いそう提案してみる。すると予想通り、皆食べていくということになった。薫はいつも以上に張り切り調理を開始する。後ろに気配を感じ、振り向くと吾郎が真剣な表情で立っていた。

「結構料理上手いな」
「え、そ、うか?」

薫が嬉しそうに微笑むと吾郎はにやりと笑って髪をくしゃくしゃにする。お前にも女らしい一面があったとは、とそんなことを言いながら。むっとした薫が吾郎の胸にパンチを食らわす。吾郎はふざけたようにぐふっと言いながら倒れるフリをする。それを見て薫がばかと言いながら笑った。薫の笑顔を見て吾郎も笑った。

「美味いのを頼むぜ」
「任せとけって!」


∵愛情たっぷり手作りカレー



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