「ただいまー…」

今は両親は旅行中であるため夜遅く帰ってきても全く問題はない。しかし問題はそこではないのだ。両親よりある意味手ごわい人物がいるのだ。薫は声を殺し、足音を立てないように部屋に向かおうと足を一歩踏み出した。

「随分、遅いご帰宅で」

階段から聞こえてきた声、その声の主こそ薫の恐れている人物。弟の大河だ。大河はにやりと笑って何してたの?と首を傾げる。薫は咄嗟に思いついた嘘を口に出して、誤魔化そうとしてみる、が意味なし。

「どうせ今日も茂野先輩のとこにいたんでしょ?…でこんなに遅くなったのも…」

にやつきながら喋る大河に薫は怪しまれないように必死で笑顔を作りながら見つめる。そして言葉の続きが何なのかビクビクしながら待つ。大河は言った。どうせベッドの上でいちゃいちゃしてたからなんだろ。と。薫は顔を真っ赤にして、全否定する。

「な、なーに言ってんだよ!わ、私と本田が?いやいやないない!」
「すごく怪しいんだけど。ていうか、首にキスマークついてるし」
「嘘!?今日はしてないのに!」
「へー。“今日は”ねぇ…」

薫が必死で否定するが大河には嘘は通じない。冷静な態度で薫の反応を窺いながら、真実を話させようとする大河はとても恐ろしい。油断ならない弟に薫は思わずため息をつく。墓穴を掘ってしまった。

「ま、姉貴もそんなお年頃だし。母さん達には、黙っててやるよ」

しかし大河は優しく笑ってそう言った。薫は満面の笑みで大河に抱きつき、頭を乱暴にぐしゃぐしゃと撫でる。大河は顔を真っ赤にしながら何すんだよと抵抗するが、薫は腕の力を弱める様子はない。おまけに頬にキスのサービスまでしてきた。

「姉貴!そういうことは茂野先輩にやれって!」
「え〜…?いいじゃん別に!」
「姉貴!まじやめろって!」
「あーもう。はいはい」

大河の言葉に薫は残念そうに大河を放した。そして喉が渇いたと言って何か飲み物を用意し始めた。大河の分のカップも用意して、何を飲みたいか大河に聞くとココアと小さく呟く。薫は小さく笑いながら『了解』と短く答えた。


∵俺の姉貴もそんなお年頃



》BACK
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -