「本田、部活は?」

いつもだったら授業が終わった途端、屋上に向かう吾郎が何故薫に話しかけるのか。薫は不思議に思い、尋ねると吾郎は不満そうな顔で答えた。

「今日は、中止だとさ」
「ふーん…」

めったに一緒に帰ることができない吾郎と帰れることがとても嬉しい薫。だが素直になれず、仕方ないからなどと言ってしまった。吾郎が何だその言い方は!と言うと薫はまた冷たい言葉を返してしまった。素直で可愛い女の子にはなれそうにない薫は、自分に苛立った。

(もう少し、少しでいいから素直になりたいよ)

「ほら、行くぞ!」
「はいはい、今行くって」

***

シーンと静まり返る公園は暗く、人っ子一人いない。二人きりになることなんてあまりないので変に緊張してきた薫。何の話をすればいいのか、それを考えていると薫は何かを思い出したように『あ』と声をあげる。

「あの時のこと、覚えてる?」
「あの時?」
「夏祭りの時にこの公園にきたじゃん」

夏祭り―…二人の距離が少し縮んだ出来事。とても大切な思い出。二人だけで交わした約束…、薫は今も大切に胸の中に閉まっている。薫は少し頬を染め、喋り始める。

「あの時、本田に言いたかったことがあるんだよな、私」
「何だよ?」
「本田が…好き」
「…は!?」

薫が覚悟を決めてそう言うと吾郎は突然の告白に顔を真っ赤にして呆然としていた。まるで石のように固まった吾郎を見て薫はぶっと吹き出す。『顔真っ赤』笑いながらそう言うと吾郎は薫を見ながらうるせえと一言。しかし顔を真っ赤にした吾郎に言われても何も怖くない。寧ろ可愛い。薫は小さく笑った。そして言葉を続ける。

「ま、どうせ私の片思いだと思うし」
「俺も好きだぜ」
「…え?!」

薫の片思いではなく、両思いだった。その事実に薫は驚きを隠せず、口をポカンと開けたまま固まってしまった。頬は、さきほどの吾郎より真っ赤でまるで熟れた林檎のようだ。

「清水、林檎みてぇ…」
「なっ!」

その言葉に薫が吾郎に跳び蹴りを喰らわせようとしたときだった。ちゅっという音と共に唇にやわらかい感触。

「い、いいいま!く、口!」
「清水の唇、林檎みたいに甘いな」

吾郎は満足そうに微笑み、真っ赤になって固まる薫を置いて歩き出す。しばらくして薫は我に帰り、『本田ー!』と叫びながら吾郎の後を追った。


∵まるで林檎のように赤い頬



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