まさか、バレるとは思わなかった。
数日前、W杯が始まった。俺はアメリカまで来てくれた清水と食事に出かけていた。
「珍しいねー本田が誘ってくれるなんてさ」
「そうか?俺はいつでも優しいがn「あ、そういえば」
ひ、ひでーと吾郎が拗ねたが薫は気にせず話し始める。
「思ったんだけど、日本代表選手かっこいい人ばっかりだな」
「は!?」
思ってもいなかった言葉が出てきて吾郎も驚きを隠せない。顎が外れるんでは?と思うくらい口が開いている。
「あーあ、少しでいいから話したいな」
「お、おい清水。寿也と話したことあるだろ」
「それは、寿君は別。他の…、眉村さんとか」
薫は目をキラキラさせてそう言った。吾郎は怒りでわなわなと震えた。
「清水…そんなに俺じゃ不満か?え?そうか、不満か。そんなに不満なら別れてやろうか?」
「はぁ?不満って…そんなこと言ってないだろ」
薫はむっとした表情で吾郎を睨んだ。吾郎も負けじとにらみ返す。
「本田が1番かっこいいって思ってるよ」
「当たり前だろ…っては!?」
薫はにっと笑って、吾郎の額にデコピンをした。
「そ、そろそろ帰るか」
「そうだね」
カシャッ
「ん?」
「どうした清水?」
「あ、今シャッター押す音が聞こえた気がしたんだけど…気のせいだったみたい」
このときは誰も知らなかっただろう。このあとどんな波乱が起こるかなんて。
***
「ご、吾郎君…っ!」
「んあー?んだよ、寿也…」
半分寝ぼけた吾郎を無理やり寿也は起こして新聞をバッと開いた。
「【茂野吾郎 彼女と熱々デート】…?ふーん…綺麗に撮れてるじゃねーか」
「吾郎君、寝ぼけてないでしっかりして!」
「んああああ!な、なんじゃこりゃあああ!」
寿也に言われてやっと目が覚めたらしく、顔を少し赤らめて新聞を凝視している。薫との関係がバレたのがよほど恥ずかしいのだろう。
「もうほとんどの人にバレてるから、誤魔化しはきかないと思うよ」
寿也にとどめの一言を言われ、吾郎はがっくりうな垂れた。練習に向かうと案の定からかわれた吾郎。
「ははははっ若いなー」
「可愛い彼女じゃないか」
「う、嬉しくねぇえええええええ!」
吾郎の叫び声は練習場全体に響いた。
∵俺と彼女の関係がバレました
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