一度だって、触れたことはなかった。あいつは俺にとって大事な恋人だから、大切に大切にしたかったから。だが、あいつは違った。

「あははっ寿君面白い!」
「そう?でも、吾郎くんも十分面白いと思うよ」
「あーあれはただの野球馬鹿だよ」

寿也と楽しそうに笑う清水。俺といるときとまったく違う笑顔、楽しそうな笑い声。俺のことを、なんとも思っていないんじゃないか。そんな気持ちがぐるぐると俺の中で彷徨って出て行こうとしない。しまいにはあいつは、寿なんかに腕や頭を触られても何も言わない。寧ろ嬉しそうだ。俺だって俺だって、あいつに触れたい、いつも思っていた。なのにあいつは…。気づけば俺は、清水の腕をグイッと引っ張り抱き寄せていた。

「えっ…本田?」

もちろん、清水はびっくりして目を見開いていた。寿也はにやっと俺の方を見て笑っていた。からかっていたらしく、悪戯が成功した餓鬼のように笑っていた。

「よかったね、清水さん」
「うん。寿君有難う!」

二人は笑いながら、そう言った。

「ちょ、え、なに?」
「本田を嫉妬させよう大作戦でした」
「は、はあああああああああああああ?!」


∵貴方は一度だって触れなかった
title by 確かに恋だった



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